パワーエレクトロニクスにおいて、パワーエレクトロニクス回路を構成する主な回路素子は一体どのような種類があり、それぞれどんな特性があるのかについてを簡単に紹介していきます。
回路素子|抵抗:エネルギーを消費する抵抗
まず、回路素子とはその名の通りに電気回路を構成する要素のことを指しています。回路素子の一つである抵抗についてを紹介します。抵抗とは、電流を流れにくくする回路素子です。有名なオームの法則にあるように、抵抗Rの単位は[Ω(オーム)]です。抵抗Rに流れる電流と電圧の間には、以下のような関係が成り立ちます。
となります。この公式はかの有名なオームの法則を表しており、オームの法則は「導体に流れる電流は、電圧に比例し、抵抗に反比例する」と説明されます。この時、過度現象は生じません。過度現象とは、ある状態から次の安定した状態に変化する際の間に起こる現象のことを指します。電力変換時に起こる時間的な変化等をさすことがあります。抵抗については、電力を消費する素子です。この時、電力は以下の式で示すことができます。
回路素子|キャパシタ:静電気エネルギーを貯蓄
回路素子のキャパシタは、電圧の変化を緩やかにする素子のことで、2つの電極で誘電体(絶縁体)を挟んだものです。電気部品としてはコンデンサと呼ばれています。静電容量については、静電容量の単位は(ファラド)]です。
キャパシタ電圧は、次のように式で示されるように、電流の積分となります。
ある時点でのキャパシタ電圧がの時、コンデンサに蓄えられる静電エネルギーは、以下のような式になります。
このように表すことができます。すなわち、静電エネルギーはキャパシタ電圧(電荷)の大きさに関係しているのです。なお、この素子の電力の消費はありません。(1)の式からわかるように、キャパシタ電圧(電荷)は時間に対して連続になるのです。
すなわち、キャパシタ電圧はとびとびの値をとらないということができるのです。このことはキャパシタの重要な特性といえるでしょう。一般的にコンデンサとキャパシタは同様の意味でつかわれることがあるのですが、キャパシタは電気二重層を利用した電気二重層キャパシタや疑似キャパシタをキャパシタと呼ぶ風潮があります。
回路素子|インダクタ:電磁エネルギーを貯蓄
インダクタは、電流の変化を緩やかにする回路素子です。インダクタは、導線をらせん状にぐるぐると巻いたものを指します。電気部品としてはコイルと呼ばれることがあります。インダクタと似た言葉にインダクタンスというものがありますが、インダクタンスは、コイルの電圧と電流変化率との比を表しています。インダクタンスについての計算方法や自己インダクタンス・相互インダクタンスについては、『インダクタンスの計算方法』という記事で解説しています。
インダクタンスの単位は、ヘンリー]とされています。インダクタ電流次の式で示すように、電圧の積分になります。
で表すことができます。ある時点でのインダクタ電流がであるとき、インダクタに蓄えられている電磁エネルギーは、以下の式で表すことができます。
すなわち、電磁エネルギーは、インダクタに流れている電流の大きさに関係しています。なお、この素子の電力消費はありません。(2)の式でわかるように、インダクタ電流は時間に連続しています。すなわり、インダクタ電流はとびとびの値を取らないということです。インダクタの電流を急に0にすると、(2)式より、が大きくなり、インダクタ電流が減少するのを妨げる方向に大きな電圧を発生するので、危険になります。このことはインダクタの重要な特性といえます。
回路素子|電圧源と電流源
パワーエレクトロニクスにおいては、エネルギーの発生源を電圧源や電流源で表しています。電圧源は一定の電圧を発生し、内部のインピーダンスは0となります。電流源は一定の電流を発生し、内部インピーダンスは無限大となるのです。
回路素子の種類、特性と記号一覧
以上にみたような回路素子の種類や特性を記号を以下のひょうにまとめました。
部品 | 記号 | 役割 | 特性 |
---|---|---|---|
抵抗 | 電力を消費する | 過度現象を生じない | |
コイル | 磁気エネルギーを貯蓄 | 電流は連続する | |
コンデンサ | 静電エネルギーを貯蓄 | 電圧は連続する | |
スイッチ | 電圧、電流を裁断する | スイッチオン時インピーダンス0 スイッチオフ時インピーダンスは∞ |
|
電圧源 | 電圧を発生する | 内部インピーダンスは0 | |
電流源 | 電流源を発生する | 内部インピーダンスは0 |
まとめ
以上のように、パワーエレクトロニクスの基本となる回路素子についてを簡単にいくつかその種類や特性、記号についてを紹介してきました。回路素子の構成や特性、式についてはパワーエレクトロニクスを勉強するうえで欠かせない要素です。回路素子の特性等を知っておく必要があるでしょう。