電気主任技術者試験の法規科目で出題される電気事業法ですが、対策としては単純な制定法暗記ではなく、要所要所でポイントを抑えることが重要です。そこで、電気事業法のポイントを簡単に解説します。

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電気事業法とは?目的や施行規則等

電気事業法の目的

法律が制定される過程においてその目的は必ず存在します。電気事業法においても例外ではありません。電気事業法はその目的を「電気事業の目的を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。」としています。

日常生活に欠かせない一方、電気は目に見えず、その扱いには危険性を伴います。それゆえに電気を安全に扱うことで電気設備の保全に努めることに要点があります。

電気事業法上の電気工作物の種類

電気工作物とは発電、変電、送電、配電、または電気使用のために設置する種々の工作物のことを指します。電気工作物にはいくつか種類があり、大きく「事業用電気工作物」、「一般用電気工作物」に分かれています。それぞれの違いは以下のようになります。

電気工作物の区分

電気工作物の区分

事業用電気工作物、一般用電気工作物それぞれに電気士業法上の規定がなされています。

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事業用電気工作物に関する規定を解説

電気事業法においては、事業用電気工作物に関する主な規定として[1]事業用電気工作物の維持、[2]保安規定、[3]電気主任技術者、[4]事故報告義務、[5]工事計画の5つについての規定がなされています。

[1]事業用電気工作物の維持についての規定

事業用電気工作物の維持に関する規定は電気事業法39条第1項、2項、第40条にあります。電験3種の法規の問題で抑えておくポイントは以下になります。

  • 事業用電気工作物は人体に危害をおよぼし、または、物件に損害を与えないようにすること
  • ほかの電気設備そのほかの物件の機能に電気的または磁気的な影響を与えないようにすること
  • 事業用電気工作物の損壊により一般送配電事業者の電力の供給に著しい支障を生じさせないようにすること

電気設備の損壊などによって火災や通信障害等が起きてしまう可能性がありますが、そうした事故を防ぐために技術の性能についてを電気設備の技術基準という技術ガイドラインによって規定しています。

[2]保安規定

自家用電気工作物の設置者は電気工作物の安全を確保するために工事・維持・運用に関する保安規定というものを作成する義務があります。電気事業法においてこの保安規定作成義務は課されており、1部を自家用電気工作物の設置者が保有し、1部を経済産業省に届け出る必要があります。

具体的にどのような内容を保安規定に盛り込むのかというと、以下のような内容になります。

  1. 工事、維持、運用義務を管理する者の組織や職務に関する内容
  2. 工事、維持、運用の保安のための巡視、検査、点検に関する内容
  3. 1.2に定める業務に従事する者に対する保安教育に関する内容
  4. 事業用電気工作物の運転及び、操作に関する内容
  5. 発電所の運転を一定期間停止する際における保全の方法
  6. 災害時などの非常事態における措置内容
  7. 事業用電気工作物の工事、維持、運用に関する保安の記録に関する内容
  8. そのほか上記の内容における工事、維持、運用に関して必要となる事項

[3]電気主任技術者

事業用電気工作物を設置する者は、必ずその受変電設備や電気工作物の内容に合わせて、それらを監督することのできる電気主任技術者を選任し、経済産業省に届け出る必要があります。電気主任技術者には1~3種の区分が存在し、それぞれ以下のように保安できる範囲が電圧によって異なります。

種類保安範囲
第1種電気主任技術者すべての事業用電気工作物
第2種電気主任技術者電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物
第3種電気主任技術者電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物
(出力5000V以上の発電所を除く)

自家用電気工作物設置者は電気主任技術者をおかなければなりませんが、以下のような方法があります。

①電気主任技術者の兼任
 一定の条件を満たしており、所轄産業保安監督部長などの承認を受けることができた場合、1人の電気主任技術者にたいして2以上の自家用電気工作物の電気主任技術者に兼任させることが可能になります。

②電気主任技術者の許可選任
 500KW未満の自家用電気工作物においては、所轄産業保安監督部長等の許可により電気主任技術者の免状をもっていない者を電気主任技術者として選任することができます。

また、電気主任技術者の選任を外部委託することも可能になっています。

③電気主任技術者の外部委託
 所轄産業保安監督部長の承認のもと、以下のような場合において電気管理技術者、電気保安法人への電気主任技術者の外部委託が可能になっています。

  1. 電圧7000V以下で連携などする、出力2000kw未満の発電所の設置の工事のための事業場
  2. 電圧7000V以下で連携などする、出力2000kw未満の発電所
  3. 電圧7000V以下で連携などする、出力1000kw未満の発電所(1.除く)の設置の工事のための事業場
  4. 電圧7000V以下で連携などする、出力1000kw未満の発電所(2.除く)
  5. 電圧7000V以下で受電する需要設備の設置の工事のための事業場
  6. 電圧7000V以下で受電んする需要設備のみの事業場
  7. 電圧600V以下の配電線路を管理する事業場

いくつか電気主任技術者の選任を外部委託をするための要件が列挙されていますが、電圧7000V以下で連携している事業用電気工作物を設置している場合は外部委託ができるかどうかを検討することが可能になります。

[4]事故報告義務

電気工作物により電気事故が発生した場合、まず電話などにより自己の発生を察知してから24時間以内に報告し、さらに30日以内に原因も含めた詳細な事故状況に関する報告書を作成し、提出する必要があります。このような報告義務については「電気関係報告規則第3条」に規定されています。

  1. 人が死傷した場合(死亡又は入院した場合)
  2. 火災事故が発生した場合(感電などによって)
  3. 社会的影響を及ぼした事故の場合
  4. 主要な電気工作物の破損事故が発生した場合
  5. 電圧3000V以上の自家用電気工作物の自己によって、電気事業者に供給生涯を発生させ、事故に至った場合

[5]工事計画

省令で定める事業用電気工作物の設置や改造等の変更工事をする場合は、工事の開始30日前までに経済産業省に届ける必要があるのです。省令で定めるような電気工作物というのは、水力発電所、汽力発電所の設置の場合や出力500kWの風力、燃料電池発電所の設置、受電電圧1万V異常の需要設備の設置などですので、全ての事業用電気工作物ではないようです。

一般用電気工作物に関する規定を解説

一般用電気工作物とはおおまかに600V以下の電圧で受電する電気工作物でした。電気事業法では、事業用電気工作物だけでなく、一般用電気工作物についても規定しています。一般用電気工作物に関しては、電力会社のような電力供給が維持管理を行う必要があるのです。この維持管理に関して以下のようなことを規定しています。

  1. 一般用電気工作物が技術基準に適合しているか4年に一回以上調査すること
  2. 帳簿を整え、4年間保持する

  3. 経済産業省の登録を受けた法人に調査義務を委託可能である。一方、事業用電気工作物に関しては、それを設置する者(電力会社、ビル等)が維持管理を行う必要がある。

維持管理に関しては、以下のようなことが定められています。

  1. 事業用電気工作物は人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えない
  2. ほかの電気的設備そのほかの物件の機能に電気、磁気的な影響を与えない
  3. 事業用電気工作物の損壊により一般送配電事業者の電気の供給に著しい支障を及ぼさない

まとめ

以上のように電気事業法の規定を事業用電気工作物と一般用電気工作物の2種類の電気工作部tに関してそれぞれ要点を解説しましたが、電気事業法は非常に幅広く、試験の際は要点のみを暗記しておくことが求められるようです。電気事業法自体は、電気設備の保安に関する重要な規定ですので、電気供給を行う者、電気設備を設置する者は知っておく必要があります。