日本という島国はエネルギー資源が乏しい国であることは誰しもが知っていることでしょう。2回のオイルショックはエネルギー資源の大切さを教えてくれる教訓になっています。そこから、いかにして少ないエネルギーを効率的、合理的に使用し国民の生活福祉に貢献するかというのは日本の社会課題の一つと位置付けられました。。「省エネ」という言葉もこのような背景から誕生した言葉です。

こうした背景の元、昭和54年に制定された法律が「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」、通称「省エネ法」と呼ばれる法律です。それに伴いエネルギー管理士という国家資格が誕生しました。

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エネルギー管理士とは?どんな仕事内容省エネ?

エネルギー管理士とは施設で選任され、省エネを管理する仕事

規定量以上のエネルギーを使用する工場は第一種エネルギー管理指定工場に指定され、エネルギー管理士はそこで省エネの維持、推進業務を行うというお仕事をします。このうち製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5業種については、エネルギーの使用量に応じてエネルギー管理士の免状交付を受けている人のうちから1人ないし4人のエネルギー管理者を選任しなければならない 参照元:省エネルギーセンター

一規定量以上のエネルギーとは熱(燃料など)電気を合算した年間使用量が原油換算3,000kl以上を指すようです。このような施設でエネルギー管理士は仕事をします。具体的にどのような仕事をエネルギー管理士がするのかというと、例えば、以下のような仕事をこなします。

省エネ計画を立案経産省の補助金を受ける計画実行省エネ診断(代行もあり)診断結果から評価と問題点を報告改善措置

基本的にエネルギー管理士の仕事内容は省エネ法11条により、「エネルギーを消費する設備の維持、エネルギーの使用の方法の改善及び監視、その他経済産業省令で定めるエネルギー管理の業務を行う」と定められています。エネルギー使用の合理化を目的に工場をはじめとして、病院やビルなどの施設で選任され、仕事をしていくのです。

と省エネ法で定められています。ここで、用語の混乱を防ぐため、でできたエネルギー管理士とエネルギー管理者(エネルギー管理員)との違いを把握しておきましょう。

エネルギー管理士とエネルギー管理者(エネルギー管理員)の違い

エネルギー使用量によって免状公布を受けたエネルギー管理士の選任先、人数は異なります。

エネルギー使用量によって免状公布を受けたエネルギー管理士の選任先、人数は異なります。(クリックして拡大)

上の図からわかるように免状を交付されたエネルギー管理士は、エネルギーの使用量と用途によって選任されます。つまり、、免状交付を受けた者が「エネルギー管理士」で、免状交付を受け、選任される者が「エネルギー管理者」、「エネルギー管理員」となります。

エネルギー管理士として選任される場合、免状交付を受けていることが大前提になるのですが、免状交付を受けるためには、国家試験に合格するか、講習会を受けるかして合格する必要があります。

エネルギー管理士の受験資格、合格基準、免状交付の実務経験とは

エネルギー管理士の受験資格はどうなの?免状交付の実務経験

項目概要
受験資格なし
受験料17,000円
申込期間5月上旬~6月上旬(年1開催)
試験時期8月
試験日程1限目9:00~10:20(80分)
2限目10:50~12:40(110分)
3限目14:00~15:50(110分)
4限目16:20~17:40(80分)
試験形式マークシート筆記試験
合格基準課目60%
課目合格制あり
試験会場北海道、宮城県、東京都、愛知県、富山県、大阪府、広島県、香川県、福岡県及び沖縄県
試験実施母体省エネルギーセンター

エネルギー管理士試験の受験資格はありません!ですので誰でも受験が可能なのです。エネルギー管理士試験は「熱分野」と「 電気分野」に分かれています。この電気と熱の試験はどちらでもその合格後の効力は変わりません。熱分野・電気分野の試験科目は以下のようになります。エネルギー管理士の合格基準は、電気・熱同様で60%の得点が必要になります。エネルギー管理士試験の配点は各試験問題に記載されています。

課目
試験内容
必須基礎課目
1 エネルギー総合管理及び法規(エネルギーの使用の合理化等に関する法律及び命令、エネルギー総合管理)
選択課専門目:熱
2熱と流体の流れの基礎(熱力学の基礎、流体工学の基礎、伝熱工学の基礎)
3燃料と燃焼(燃料及び燃焼管理、燃焼計算)
4熱利用設備及びその管理(計測及び制御、熱利用設備)
選択専門課目:電気
2電気の基礎(電気及び電子理論、自動制御及び情報処理、電気計測)
3電気設備及び機器(工場配電、電気機器)
4電力応用(電動力応用、電気加熱、電気化学、照明、空気調和)

合格後にエネルギー管理士の免状交付申請をするわけですが、免状交付の条件として実務経験が求められます。エネルギー管理士の免状交付の実務経験は1年以上とされています。どのような実務経験が必要なのかといえば、「エネルギー使用の合理化に関する実務経験」が必要になるのです。具体的な実務家経験としては空調設備、給湯設備などの設備をエネルギー使用合理化の目標の下に省エネ施策を計画・実行するような実務経験となります。

[エネルギー管理士]講習会(認定研修)で取得する場合。合格率や費用は?

項目概要
受験資格研修申込時までにエネルギーの使用に関する合理化に関する実務に3年以上従事
費用70,000円(新規)、50,000円(一部課目合格者)
受講会場全国10地区
申込期間おおよそ9/20~10/17
受講期間6日間(平成30年度は12/11(月)~12/17(日))
合格発表2月中旬(平成30年度は2/15(木))

講習会・認定研修でエネルギー管理士の免状交付を受ける場合、試験とは異なり、受験資格に制限があります。認定研修の受験資格で必要な実務経験年数は3年が必要です。エネルギー管理士認定研修での実務経験の内容は、試験での免状交付と同様です。熱設備ではボイラ設備、ガスタービンなどでの実務経験、電気設備では発電・送電・受変電設備等での経験が必要になるのです。

認定研修・講習会の最終日には修了試験という筆記試験(マークシートではなく記述)を受けることになります。そこで合格するとエネルギー管理士の資格を認定取得できます。認定研修・講習会での取得は必ずしも100%が合格するわけではないようです。認定研修の合格率はおおよそ60%となっているようです。認定研修(講習会)による取得では、受験資格の実務経験が3年と長い実務経験が必要になるので、受験資格のない試験での取得がよさそうにも見えますが、難易度は認定研修の方が低いです。

講習会(認定研修)も10万円ほどしますし、参考書・テキスト代で10万円いくことは考えにくいので、費用と確かな知識を考えると、試験で取得するほうが省エネに関する知識の信頼はありそうです。

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エネルギー管理士の合格率・難易度とは?勉強時間・勉強方法やおすすめ参考書

エネルギー管理士の合格率は低い?熱と電気でどっちが合格率高い?

現行試験制度でのエネルギー管理士合格率推移(過去5年)

現行試験制度でのエネルギー管理士合格率推移(過去5年)

平成25年試験から電気と熱分野の試験の合格率などの公表データが合算のものとなりました。過去5年のエネルギー管理士の合格率を見ると、おおよそ20代~30%代で合格率は推移しているようです。エネルギー管理士試験の合格率は電験2種のような合格率10%以下のような試験とは違い、やたらめった合格率が低い試験であるわけではないようです。

熱分野と電気分野はどっちが合格率が高いのか?

エネルギー管理士電気分野合格率推移(過去15年分)

エネルギー管理士電気分野合格率推移(過去15年分)

エネルギー管理士熱分野合格率推移(過去15年分)

エネルギー管理士熱分野合格率推移(過去15年分)

このグラフからすると熱分野のほうが合格率が高いので、熱分野を選択するほうが合格しやすいと思われます。しかし、2012年までのデータしか公表されていないので以降は難易度調整が行われている可能性がありますので、参考までにという程度でよいかと思います。ただ、電気分野を選択する場合、すでに電験3種の資格を保有している場合だと、合格率がぐっと上がる可能性があります。

さらに、エネルギー管理士の法律が改正になり電気と熱の区別がなくなり、どちらで受験し、合格しても資格としての効力は同一になりました。なので、どっちがいいとは一概にはいえません。

エネルギー管理士の勉強時間・勉強方法・おすすめ参考書

エネルギー管理士の勉強方法や過去問対策方法、過去問をベースとした勉強方法は、電気分野で「エネルギー管理士・電気分野の勉強方法」、熱分野で「エネルギー管理士・熱分野の勉強方法」をご参照ください。エネルギー管理士の試験に合格する勉強方法としては、やはり過去問を解き倒すことが重要です。

ただ、過去問を解くのではなく、誤った箇所に付箋を貼り、用語問題や公式を単語帳でまとめて、隙間時間に勉強する勉強方法が効果的です。試験実施団体は過去問を公表していますが、過去問解説はなされていません。そこで、エネルギー管理士試験の過去問解説を行っている参考書・テキストなどおすすめ参考書を紹介します。

エネルギー管理士・基礎共通科目参考書・テキスト

参考書特徴
ECCJが出版するエネルギー管理士共通基礎科目のテキスト&問題集参考書。
法律改正の多い省エネ法の改正にも触れており、丁寧な解説と問題集がある。
過去問では対応できない問題をカバーしている。
テキスト、例題の構成でインプットとアウトプットを両立。
吹き出し等で
わかり安く条文解説などがされてある。
重要ポイントも記載

エネルギー管理士・熱分野参考書・テキスト

参考書名特徴
熱分野に関する網羅的な対策が可能。
初学者であっても解説が丁寧なのでわかり安い。
これと併せて過去問で対策することで補完。
教科書的な参考書であるが、
ある程度前提知識がある人にとってはなじみやすい
実際の試験で多くの受験生が手にしているのを目にする。
省エネルギーセンター出版の参考書。
熱分野の各科目毎の解説を4冊に分けて収録。
どの課目も比較的初学者にとっては難しいものだが、業務に役立つことがある。
このシリーズは微分積分等の大学数学基礎レベルの知識を保有している人向け
エネルギー管理士熱分野の過去10年分の問題が収録。
初学者にも優しい解説と問題量が豊富なので、解き倒すことができる。
この問題集と☝の徹底研究がAmazonでよくセットで購入されている。

エネルギー管理士・電気分野参考書・テキスト

参考書名特徴
電験3種に合格しているレベルならば解説がわかり安くとっつきやすい参考書。
その一方、電気数学等、電気のの知識がある前提で書かれているので、初学者には難しく感じることがある。
参考書の情報が網羅的で試験範囲の4科目をカバーしている。
教科書的に利用する人が多く、試験で重要なポイントを把握するのに役に立つ。
エネルギー管理士の試験対策本としてのシェアは高い。
省エネルギーセンター出版のテキスト参考書。
直前整理とあるように情報用は少ないが
、復習用テキストとして使用する使い方ができる。
全科目分収録されたコンパクトな書籍だが、間違い、誤植がちらほらあるとのこと。
エネルギー管理士の問題集。過去12年分の過去問を収録。解説もついて800ページにもわたる分厚い本。
解答解説がやや不親切なので教科書テキストと合わせて勉強することが重要。

エネルギー管理士の参考書を購入する際のコツはテキストだと、試験科目をきちんと網羅的に解説しているかどうか、初学者の場合、図やわかり安い言葉で設計されているか、過去問解説の濃度はどうかなどのポイントがあります。自分のレベルに合わせてテキスト・過去問対策参考書を購入するのがよいでしょう。エネルギー管理士の参考書については☞「エネルギー管理士のおすすめ参考書ランキング」で解説しています。

エネルギー管理士の年収ってどのくらいなの?

エネルギー管理士の年収を求人から調査!

求人情報数から見るエネルギー管理士の年収(千円)

求人情報数から見るエネルギー管理士の年収(千円)画像を押すとエネルギー管理士の求人情報を確認できます。

エネルギー管理士の資格保有者を対象にしたエネルギー管理士の年収の幅をヒストグラムで表示しました。これを見ると、450~550万円帯、年収600~750万円帯での年収提示をしている求人が多くあるようです。エネルギー管理士の免状交付者保有者に対する需要が表れています。必ずしもエネルギー管理士をエネルギー管理士として選任したいという求人ばかりではなく、免状を保有していることがスキルの証明になっているようです。エネルギー管理士の年収をまとめると、以下のような表になります。

平均年収
月給日給
最高年収
529万円
44万円22,000円900万円

エネルギー管理士の年収は低いということはなく、免状を受けていることがスキルの証明になっていたり、資格手当を支給されたりするので、年収が高くなっているのでしょう。

エネルギー管理士のメリット

エネルギー管理士の資格はビルメン上位資格のうちの一つとして位置づけられる資格です。エネルギー使用量の大きい(第一種指定工場)会社では選任が義務付けられている関係上、エネルギー管理士の採用は必ず行われています。もちろん、工場でしか働けないということはなく病院、学校、ビルなど、省エネに関係する建築物などで活躍する方もいらっしゃいます。そうした意味では広く就職先が開かれている資格職と言えるでしょう。

工場の場合ですと、仮にエネルギー管理士を選任しないならば、罰金が科せられてしまいますので、企業側からすると、エネルギー管理士の採用のサイクルを止める事はないでしょう。ですので、エネルギー管理士側からすると就職や転職のチャンスといえるわけです。実際にエネルギー管理士という資格職は業務特性(その人にしかできないこと)が高いので、就職活動、転職活動に有利といえ、実務で資格で学んだことが活かせるかどうかは別として、求められ続ける資格職です。

是非ともエネルギー管理士を取得し、理想的な省エネライフを送りましょう。

まとめ

以上のようにエネルギー管理士の資格についてを幅広い観点から紹介してきました。エネルギー管理士の試験は確かに難易度の高い国家資格ですが、必ずしも試験で取得しなくてよく、認定研修で免状を取得することもできます。エネルギー管理士の免状を受けたあとは、転職に有利になったり、比較的高い資格手当を支給されることがあります。エネルギー管理士の免状交付を目指すことは非常にメリットがあるといえるでしょう。