第二種電気工事士試験の筆記試験でしばしば出題されることがあるのが、「フロアダクト工事」。フロアダクト工事は電気工事の施工方法のうちの1種ですが、このフロアダクト工事とは一体どのような工事で、どのような場所で施設できる工事なのか、などといった観点から「フロアダクト工事」を紹介します。
フロアダクト工事とは?使用電圧300以下
フロアダクト工事とは床内に埋設する工事、ビルの工事で使用される
フロアダクト工事とは、別名「床下線ぴ工事」とも呼ばれ、ビルディングなどの床内にあるフロアダクトと呼ばれる電線を取り出す口穴を設けた鋼製ダクトを格子状に埋め込み、事務用機器や電気スタンドなどの電源を取り出せるようにしたものの事を指します。
現代において電気の供給はなくてはならない存在ですが、経済活動を行うのも電気の供給があってこそです。企業が入るオフィスビルディングなどの床内にフロアダクトを埋設するのですが、そうすることで電線、電話線、LANケーブルを露出せず隠ぺいした状態で電気を通すことができるようになるのです。
ただ、一度埋設すると二度と取り出せないのかというと、そうではありません。後に説明しますが、ハイテンションアウトレットなどを使用して取り出しが必要な電源個所に配線工事をすることもできます。
フロアダクト工事の施設条件・場所:300V
フロアダクト工事は、使用電圧が300V以下の電線やケーブルを収めて、屋内の乾燥したコンクリートなどの床内に埋め込む場合に限って施設することができる工事です。フロアダクト工事の施設場所は非常に限定的です。フロアダクト工事の施設場所をまとめると、以下の表のようになります。
展開した場所 | 点検できる隠ぺい場所 | 点検できない隠ぺい場所 | |||
---|---|---|---|---|---|
乾燥した場所 | 他場所 | 乾燥した場所 | 他場所 | 乾燥した場所 | 他場所 |
✖ | ✖ | ✖ | ✖ | コンクリート等の床内に限る | ✖ |
フロアダクト工事は点検できない隠ぺい場所、かつ乾燥した場所でコンクリートの床内に限って埋設する工事なのです。フロアダクト管の内部に収める電線やケーブルは使用電圧300V以下となっているので注意が必要です。
フロアダクト工事で使用する電線とは?
フロアダクト工事とはどのような工事でどのような場所で施設するのかについてを見てきましたが、次にフロアダクト工事では実際にどのような電線を用いるのでしょうか。
フロアダクト工事で使用する電線は内断面積32%以下になるように注意
フロアダクト工事で使用する電線は「屋外用ビニル絶縁電線(OW線)を除く絶縁電線で、より線を使用します。」ただし、直径3.2mm以下のものの場合に関しては単線の電線を使用することができます。電気工事の他の種類においてもこのOW線を除くという文言は出てきますね。
フロアダクト工事で使用する電線に関してはいくつか注意点があります。それは絶縁被覆を含む断面積の総和は、ダクトの内断面積の32%以下になるようにするということです。このことは内線規程に定められており、低圧屋内配線工事において電線管に収める電線の太さが異なるときの規定になります。
フロアダクト工事において電線を接続するには、電線を分岐する場合、その接続点が容易に点検できる場合を除いて、全てをジャンクションボックスの内部で行います。フロアダクト工事内部で接続してはいけないことになっています。ジャンクションボックスは、電線同士を結合させたり、分岐、中継させたりするときに使用する端子の保護管のことを指します。屋内配線工事ではよく使用されるボックスです。ジャンクションボックスには電線通過用の穴が開いてあるので、その穴に電線を通します。
フロアダクト工事の施工方法、接地工事はD種を(接地の省略はできない)
フロアダクト工事はダクトサポートで取り付ける
フロアダクト工事を施工する際には、2m以下毎の間隔にスラブ配管でダクトの高さを調整するためのダクトサポートを使用して水平に取り付けを行います。その際はジャンクションボックスとの間は一直線にすることになっています。
フロアダクトには、0.6~1m毎にインサートという電線引き出し口があります。フロアダクトのインサートには、インサートキャップを用いて蓋をします。このインサートに、床にコンセントを取り付けるときに使用するハイテンションアウトレットボックスを接続するのです。なお、フロアダクトを相互に接続する際にはダクトカップリングを使用します。
強電流が流れる100V電源線を取り出す場合などでハイテンションアウトレットボックスは使用されます。ハイテンションアウトレットボックスの対義語としてはローテーションアウトレットボックスです。フロアダクト工事で強電線を使用するときはハイテンションアウトレットボックスを使用しますが、弱電線を引き出すのに使うボックスはこのローテーションアウトレットボックスとなります。
フロアダクト相互やダクトとジャンクションボックスおよびインサートとは、堅牢かつ電気的に安全に接続することが内線規程で定められています。なお、フロアダクトの終端部にダクトエンドを使って閉塞させます。フロアダクト工事で使用する部材を整理すると、以下のようになります。
- フロアダクト
- 床内に埋め込み施工する配線用ダクト
- ジャンクションボックス
- フロアダクト用の結合・中継ボックス、だいたい4箇所からなるものが多い
- ダクトカップリング
- ダクト相互接続
- インサートキャップ
- インサートを閉じるための蓋でビス状のマーカーとなっているのをインサートマーカとも呼びます。埋め込みインサートキャップと露出インサートキャップがあります。
フロアダクト工事の接続方法は以下のようになります。様々な部材を活用してフロアダクト工事を行っていきます。
フロアダクト工事の接地工事!
まず、接地工事にはA種からD種と種類があります。接地工事のそれぞれの違いは以下のようになります。
工事種類 | 工事概要 |
---|---|
A種工事(第1種) | 高圧・特別高圧機器の金属製外箱等 |
B種工事(第2種) | 高圧・特別高圧電路と低圧電路を結ぶ変圧器の低圧側端子 |
C種工事(第3種) | 300Vを超える低圧機器の金属製外箱等 |
D種工事(特別第3種) | 300V以下の低圧機器の金属製外箱等、計器用変成器の二次側電路 |
電気工事の中には接地工事を省略できる場合がありますが、フロアダクト工事では、接地工事の中でもD種接地工事を行う必要があります。その理由は単にフロアダクト工事ではD種接地工事を省略できる条件ではないからです。なので、ダクトが短くてもD種接地工事を施す必要があるのです。
まとめ
以上のように、第二種電気工事士筆記試験でも出題されることがある「フロアダクト工事」についてを紹介してきました。フロアダクト工事のポイントは、
- コンクリートなど床内でフロアダクトを埋設する工事
- フロアダクト内部で電線を繋ぐのではなく、ジャンクションボックスで接続する
- フロアダクト工事にはD種接地工事を施すこと
といった点でしょう。フロアダクト工事は今のビルディングの電気の供給を支える工事として今後も用いられていく電気工事の施工方法なのではないでしょうか。