近年電気保安を担う国家資格である電気主任技術者が将来的に不足していくのではと危惧されています。この記事では電気主任技術者が不足していくことの実態についてを経済産業省の資料を基に紹介していきます。

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電気主任技術者が不足していくことの課題

ここ数10年間で電気需給を取り巻く環境は変化していっています。特に再生可能エネルギー分野の隆盛は盛んになっています。年々再生可能エネルギー設備の設置件数は増加しており、そのような設備には必ず保安管理目的で電気主任技術者を選任するという義務があります。

選任義務需要に対して電気主任技術者の数(特に第2種電気主任技術者)の供給量は中長期的に人材不足になっていくことが経済産業省により報告されています。参考:電気保安人材の中長期的な確保に向けて

第2種電気主任技術者の需給関係(出典:)

第2種電気主任技術者の需給関係(出典:電気保安人材の中長期的な確保に向けて11項より)

出典:電気保安法人の将来的な確保に向けた検討について

出典:電気保安法人の将来的な確保に向けた検討について

電験2種の需給ギャップ。出典:電気保安人材の中長期的な確保に 向けた課題と対応の方向性について

電験2種の需給ギャップ。出典:電気保安人材の中長期的な確保に
向けた課題と対応の方向性について

 

1~3種ある電気主任技術者の区分の中でも特に第2種電気主任技術者は足元では充足しているが今後地域によっては不足していく見込みが立てられているようです。

太陽光発電を中心に今後は再生可能エネルギー設備は増加していきます。その需要に対する供給が足りなくなるというのが電気主任技術者が不足していくことの課題です。

電気主任技術者の不足が継続化していくと発電業界は混乱することは間違いないでしょうし、最悪の場合、電気主任技術者の不足により安定的な電力供給は立ち行かなくなる可能性さえあります。

不足していくとされる電気主任技術者ですが、不足していくことの背景にはどういった事情があるのでしょうか?

電気主任技術者が不足していく背景

日本社会は言わずとしれた少子化社会です。電気主任技術者が不足していく背景には少子化により受ける影響もあるでしょう。ただ、それ以外の理由もあるのではないでしょうか。

電気主任技術者不足の背景❶認知度の低さ

プログラマー、ITエンジニアは電気主任技術者同様に不足していくことが見込まれる領域です。電気主任技術者と違う点は認知度にあります。

IT、ゲームなどは比較的身近な分野で、子供がなりたい職業ランキング上位に「プログラマー」がランクインする時代ですし、初等教育にもプログラミング授業が必須化するということでプログラマーは非常に認知度は高い職種、技能です。それにくらべて電気主任技術者は認知度に関してどうなのでしょうか。

電気主任技術者は身近ではないことに関しては経済産業省の見解にも表れています。

電気主任技術者を知ることになったきっかけ、認知度に関するアンケート調査

電気主任技術者を知ることになったきっかけ、認知度に関するアンケート調査(出典:電気保安人材の中長期的な確保に向けて15項)

親族に電気主任技術者がいたことが最も多い電気主任技術者を認知するきっかけでした。一般の知名度が低いことが導き出せます。工業高校や大学工学部(機電系)のバックグラウンドがない限りなかなか認知するようなきっかけがないことも背景として考えられます。

就業上電気主任技術者を認知することの背景

また、実際に電気主任技術者として勤務する人の中には職業上の理由で認知することがあるようです。

建職バンクのヒアリングでは職務での認知のきっかけを持つケースを業種毎にみていきます。

ビルメンテナンス業だと電気主任技術者資格は昇給につながるとされるから知ることが多いようです。特にキュービクル式受変電設備の保守管理などの電気設備の保守点検業務などで認知することがあります。

電気工事業従事者では自己研鑽、および昇級、転職に有利という理由から電気主任技術者を認知することがあるようです。

電力会社勤務者が電気主任技術者2種以上になると受験者の勤務先として多く、電力会社勤務以前から電気主任技術者という資格を認知していることが多く、就業後に取得をするパターンがよくあるようです。

電気主任技術者不足の背景❷認定校や工業高校の減少

電気主任技術者認定校や工業高校数の減少がもたらす電気主任技術者不足

電気主任技術者認定校や工業高校数の減少がもたらす電気主任技術者不足(出典:同様19項)

電気主任技術者認定校の減少と電気保安の人気

電気主任技術者資格を取得するには試験と国家試験に合格することの2パターンがあります。

試験と認定取得では認定取得の方が試験より相対的にハードルは低いですが、認定校を卒業したのちの就業先としては大手の機電系メーカーに就職する傾向にあり、電気保安の世界には飛び込まなくなっているようです。

ただし、認定校を卒業し実務経験を経たのちの認定取得は電験3種はともかく、2種以上になると、相当に認定取得は難易度が高いです。電気主任技術者の認定取得については☞「電気主任技術者の認定取得について」を参考。

認定校の減少の背景には機電系の中でも電気工学、つまり強電系の学部学科の減少、強電系教授や講師の減少が背景として上がっています。こうした事情もあり認定校は減少傾向にあるようです。さらに数少なくなっている認定校に在学する認定校生は電気保安の業界ではなく大手の機電系メーカーや鉄道会社での就職を目指しているようです。

ですので、電気主任技術者の認知度とともに認定校生からも人気のない領域であることがアンケート結果から読み取れます。電気保安の業界認知度の向上は逼迫した課題ともいえるのではないでしょうか

では、電気主任技術者の不足を解消するには一体どうしたらよいのでしょうか?「経済産業省の電気保安人材の中長期的確保に向けて」では電気主任技術者不足の解決策として「電気保安業界の業界認知度向上」などを掲げています。

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電気主任技術者の不足に対する解決策

電気保安業界に対する業界認知度の向上は将来の日本の電力需給を考慮しても非常に重要な問題です。いかにして若者に電気保安の世界の魅力などを伝えるかということは非常に重要な課題です。経済産業省の報告によるその解決策として「SNSや特設サイトを活用して認知度を向上すること」が解決策の一つとして挙がっています。

電気保安人材確保施策事例として大阪府の「ゲンバ男子」の取り組みが紹介されています。

電気保安人材確保施策事例として大阪府の「ゲンバ男子」の取り組みが紹介されています。(出典:ゲンバ男子大阪府)

若い世代向け(10代~20代)に建設業界で働くことの魅力を若者が受け入れやすいような形で伝えているようです。このような取り組みで建設業界の魅力が若い世代に届き、熱い思いを持った技術者が現れることを目指していいるようです。

このゲンバ男子は建設業全体という広い領域でのコンテンツなので、電気保安業界でもこのような取り組みはあっしかるべきではないでしょうか。

電気主任技術者の不足まとめ

電気主任技術者、特に第2種電気主任技術者は年々不足していく見込みがたっています。

いずれ電気主任技術者をはじめとする電気保安人材は不足していく見込みはたっています。いかにして電気保安の世界の魅力を伝えるかは産官学問わずに考えていかなければならない事柄でしょう。

建職バンクも電気保安業界がもっと若い世代に浸透するようなコンテンツを発信していきます。