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パワースイッチング工学を基に変換された多様な電力を色々な分野に応用する技術のことをパワーエレクトロニクスといいます。現代社会においてこのパワーエレクトロニクスは欠かすことのできない技術です。パワーエレクトロニクスの応用技術として、この記事では、「交流電動機」の一つ、誘導機の原理、V/F制御をトルク、すべりを用いて紹介します。

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誘導電動機と等価回路:V/F制御(速度制御)

誘導電動機:V/f制御の等価回路

空間ベクトル表示された誘導電動機の等価回路は以下のようになります。

二次側換算誘導電動機の等価回路

二次側換算誘導電動機の等価回路

回路は二次側換算されていることがわかりますので、一次側の諸量には「’」をつけています。二次側の漏れインダクタンスが消えるように等価回路を構成していることがわかります一次巻線抵抗を外部に置いたE_1'端子から右側を見た等価回路は以下のように表されるインピーダンスを持っていることがわかります

    $$Z=j\omegal'_1+\frac{1}{\frac{1}{j\omegaL_{22}}+\frac{1}{R_2/s}}$$

    $$=\omega\left(jl'_1+\frac{1}{\frac{1}{jL_{22}}+\frac{1}{R_2/\omega_s}}\right)$$

ただし、誘導電動機のすべりs=\omega_s/\omega\omegaは同期角速度、\omega_sはすべり角度を示します。誘導電動機においてすべりというのは、誘導電動機の同期速度N_sから実際の回転速度Nを引いた「相対回転速度N_s-N」と「同期速度N_s」の比のことを表しています。

なお、二次漏れインダクタンスを有しない場合の二次換算等価回路の諸量と一般的な等価回路の諸量との関係式は次のようになります。

    $$V'_1=\frac{L_{22}}{M},I'_1=\frac{M}{L_{22}}I_1$$

    $$R'_1=\left(\frac{L_{22}}{N}^2\right)R_1$$

    $$l'_1=\frac{L_{11}L^2_{22}}{M^2}-L_{22}$$

したがって、誘導電動機の入力電流I'_1は、一次巻線抵抗の電圧降下を除いた端子電圧E'_1に関連して次の式のように表現することができます。

    $$I'_1=\frac{E'_1}{Z}=\frac{E'_1}{\omega}\frac{1}{jl'_1+\frac{jL_{22}R_2/\omega_s}{R_2/\omega_s+jL_{22}}}$$

    $$=\frac{E'_1}{\omega}\frac{R_2/\omega_s+jL_{22}}{-l'_1 L_{22}+j(R_2/\omega_2)(l'_1+L_{22})}$$

となります。この式において、右辺の係数E_1'/\omegaを除くと、\omegaとは無関係な\omega_sだけの関数といえます。言い換えると可変速駆動時において|E'_1|/f=E'_1/fの値を一定に保った状態において、入力電流値はインバータ周波数、つまり同期角速度\omegaと無関係になります。

一方、入力電流I'_1は励磁インダクタンスL_{22}と二次抵抗R_2/sに分流されます。そして\omega_sの関数としてそれらの電流値は次のような式で計算することが可能です。

    $$I_0=\frac{R_2/\omega_s}{R_2/\omega_s+jL_{22}}I'_1$$

    $$=\frac{E'_1}{\omega}\frac{R_2/\omega_s}{-l'_1L_{22}+j\left(R_2/\omega_s\right)\left(l'_1+L_{22}\right)}$$

    $$=\frac{E'_1}{\omega}\frac{R_2/\omega}{A}exp\left{j(\theta-\pi)}\right$$

ただし、以下のようになる。

    $$A=\sqrt{(l'_1 L_{22})^2+(R_2/\omega_s)^2(l'_1+L_{22})}$$

$$,\theta=tan^-1\frac{(R_2/\omega_s)(l'_1+L_{22})}{l'_1 L_{22}}

    $$I_2=\frac{jL_{22}}{R_2/\omega_s+jL_{22}}I'_1$$

    $$=\frac{E'_1}{\omega}\frac{jL_{22}}{-I'_1 L_{22}+j(R_2/\omega_s)(l'_1+L_{22})}$$

    $$=\frac{E'_1}{\omega}exp \left{j\left(\theta-\frac{\pi}{2}\right)\right}$$

したがって、誘導電動機の発生トルクは、極体数を1とした場合、次のような式になります。

    $$T=L_{22}I_0\times I_2=\frac{L^2_{22}(R_2/\omega_s)}{A^2}\frac{\left(E'_1\right)}{\omega}^2$$

誘導電動機のV/f制御(誘導電動機のV/f一定制御)とは?

このトルク値は(E'_1/\omega)の関数で、E'_1/\omegaの値が一定であれば、、トルクは不変となります。したがって、(E'_1/\omega)で一定の条件を維持しつつ\omegaをパラメータとしてトルク関数を図示すると、以下のようになります。

誘導電動機の可変速度制御特性(ωの値をパラメータとし、(E'₁/ω)を一定値に維持。ωは315を最大値に50刻みで変化:出典:電気学会講座パワースイッチング工学P205より作成)

誘導電動機の可変速度制御特性(ωの値をパラメータとし、(E’₁/ω)を一定値に維持。ωは315を最大値に50刻みで変化:出典:電気学会講座パワースイッチング工学P205より作成)

図の横軸を誘導電動機の回転角速度\omega_mとしており、曲線の最右端の点が同期角速度\omegaに対応する点となっています。その点を原点に測った左方向への横軸の距離はすべり角速度\omega_s=\omega-\omega_mになることがわかります。ここで、\omegaはパラメータとして用いられており、50Hz対応の\omega=315rad/sの曲線が赤線となっています。同期角速度\omegaを減少していくと、トルク-速度曲線が原点方向へ平行移動しています。各曲線と負荷特性の交点(赤い丸)が動作点になります。

上記のような誘導電気の特性は、\omegaの変化に対して一次抵抗を除いた電動機端子電圧をE/fの直線に従って変化させることとなります。一次抵抗の電圧降下を考慮すると、インバータの出力電圧は図のように、V/fの曲線に従って変化することが求められます。誘導電動機の可変速度制御において、V/fの値を規定の曲線に従って制御することをV/f制御といいます。V/f制御は、電圧周波数比制御とも、V/f一定制御と呼ばれることがあります。

誘導電動機のV/f制御とE/F一定制御

誘導電動機のV/f制御とE/F一定制御

誘導電動機のV/f制御は、V/f=一定とするこによって励磁電流が一定になります。そうすることで磁気飽和を防ぐことができ、ギャップ磁束も一定に保つことが可能になります。つまり、誘導電動機のV/f制御は電動機に印加する電圧と周波数の比を一定にする方式ということができるでしょう。安定駆動に寄与しますが、オープンループ制御であるために制御応答性が高くとれないといったデメリットもあります。

V/f制御は始動トルクが少なく、負荷変動も少ない用途で使用されています。V/f制御の応用分野としては、ファンや空調、洗濯機などで応用されています。

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誘導電動機のベクトル制御

誘導電動機におけるベクトル制御はあらゆる分野で応用されている

ベクトル制御は、交流電動機の制御方法の一つです。交流電動機のベクトル制御は、交流電動機を流れる電流をトルクを発生する電流成分と磁束を発生する電流成分に分解し、それぞれの電流成分を独立に制御する制御の方法となっています。なぜこれをベクトル制御というのかというと、電動機の回転磁界の磁束方向と大きさをベクトル量として制御できるためです。

ベクトル制御は、高水準のトルク制御を行うことが可能で、工作機械、鉄鋼圧延機、エレベーター、電車、電気自動車などのあらゆる分野で応用されています。最近だと、電動機入力端子の電圧電流量から回転速度の演算をする技術が進歩し、速度エンコーダを省略したいわゆるセンサレスベクトル制御というベクトル制御も完成され、あらゆる分野で応用されています。

ベクトル制御の用途をかいつまんでいうと、始動トルクが大きく、負荷変動のある用途で使用される技術です。それゆえに工作機器などで応用されています。

誘導電動機のベクトル制御の原理・仕組み・等価回路

V/f制御は基本的に速度制御です。高度のサーボ系においてはトルク制御が求められています。誘導電動機あるいは同期機においては、トルクは電流によって与えられています。ですので、トルク制御を行うには電流源インバータが必要になってきます。電流源駆動誘導電動機の等価回路は、回転座標系で示したもので、以下のようになります。

誘導電動機ベクトル制御

誘導電動機ベクトル制御

この図では、電流源の空間ベクトルは直流ベクトルとなっています。電流源は理論的にその電源インピーダンスが無限大として扱われますので、電動機の一次側のインピーダンス分は無視しています。また、過渡状態での回路動作も念頭におき、過渡項pL_{22} i"_0も図示しています。なお、回転するd-q座標系における空間ベクトルについては「”」をつけています。ここで、電流駆動源時の誘導機方程式は以下のような三つの式から成り立ちます。

    $$i"_1=i"_0+i"_2$$

    $$(p+j\omega_s)L_{22}i"_0=R_2i"_2$$

    $$T=L_{22}i"_0\times i"_2$$

誘導電動機の二次回路に印加される電圧は速度起電力のj\omega_s L_{22}i"_0と変圧器起電力pL_{22}i"_0となります。トルクの方程式によれば、トルクはi"_0i"_2とのベクトル積で与えられます。高度の線形トルク制御を行うには一般的にi"_0を一定値とし、トルクTに比例するi"_0を励磁電流成分といい、i"_2をトルク電流成分と呼びます。

励磁電流i"_0を一定値とするもう一つの重要な目的は過渡項pL_{22}i"_0をゼロにすることです。その結果として二次回路の電圧方程式より、j\omega_s L_{22}i"_0=R_2 i"_2の関係を得ることができます。なお、PL_{22}i"_0=0の条件においては、過渡状態を定常状態と同じように考察することができます。このとき、誘導電動機のベクトル制御はこの基本発想に基づいているということができるでしょう。

電動制御インバータによる誘導電動機のベクトル制御

誘導電動機の電流制御形インバータによるベクトル制御構成(出典:電気学会パワースイッチング工学)

誘導電動機の電流制御形インバータによるベクトル制御構成(出典:電気学会パワースイッチング工学)

この誘導電動機の電流制御インバータによるベクトル制御構成では、電動機回転数\omega_mと励磁電流値i"_0が命令として与えられています。一般にi"_0は一定値に設定されています。回転座標系の基準d軸と一致させるのでi"_0=i_{2d}となります。一方、機械速度\omega_mを速度エンコーダによって検出して速度命\omega "_mと比較し、速度エラー\Delta \omega_mを求めてPI制御ブロックにより必要なトルク電流を与えるためには電流源は次のような式に示す一次電流を発生させる必要があります。ただし、ここでは、(L_{22}/M)は二次電流を一次に変換するためのお変換係数となります。

    $$i"_1=\frac{L_{22}}{M}\left(i_{2d}+ji_{2q}\right)$$

一方、分流方程式に基づいて一次電流を励磁電流成分i"_0とトルク電流成分i"_2に正しく分流させるには、二次回路の電圧方程式に基づき、pL_{22}i"_0=0の条件の下で次の式のようにすべり角速度\omega_sの設定値が計算されないといけません。

    $$\omega_s=\frac{R_2 i_{2q}}{L_{22}i_{2q}}$$

\omega_sが与えられれば、電流源電流i_1の角速度\omega\omega=\omega_m+\omega_sであることから、これを積分して空間電流ベクトルi_1の位相角\thetaを求めることができます。この位相角\thetaは回転座標系と静止座標系との変換ブロックにも送られます。

一方、電流の実測値からi_{1d}i_qが計算され、電流制御インバータの機能によって電動機電流が制御されるのです。制御に必要な演算は全てマイクロプロセッサ内部において処理され、電流検出値とエンコーダ信号の処理並びにPWMノッチ波の発生は全てマイクロプロセッサのインターフェースによって行われます。

まとめ

以上のように、誘導電動機をV/f制御、ベクトル制御を等価回路などを用いて紹介してきました。誘導電動機は現代社会において身近なものではエスカレーターなどの技術tにも応用されています。パワーエレクトロニクスの進化はどんどん進歩していっていますが、基礎理論を押さえておくことは重要でしょう。なお、本記事作成にあたっての参考文献は、『パワースイッチング工学』(電気学会,2003.8.5 金東海著)、『基礎電気気学』などを参考にしました。

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