現代社会において、通信技術の発展は欠かせません。電気通信を支える設備は電気通信設備と呼ばれますが、この電気通信設備にも当然、保守の必要はあります。電気通信設備の保守を行う者がまさしく「電気通信主任技術者」ですが、これは電気通信事業法45条を根拠とする国家資格です。ですので、国家試験(同48条)による取得が可能なのですが、果たしてこの試験、どのくらいの難易度の試験なのでしょうか。
電気通信主任技術者の試験科目
電気通信主任技術者には2種類の試験があり、「伝送交換主任技術者試験」と「線路主任技術者」のどちらかを選択して試験を受験します。試験科目は4科目で、法規、設備及び設備管理、専門的能力、電気通信システムの構成になっています。それぞれ、以下のような共通出題科目と選択分野の問題が出題されます。
試験科目 伝送交換主任技術者 線路主任技術者
1.電気通信システム
(1)電気通信工学の基礎 〇 〇
(2)電気通信システムの大要 〇 〇
2.専門的能力
(1)伝送、無線、交換、データ通信及び通信電力のいずれか一分野に関する専門的能力 〇 -
(2)通信線路、通信土木及び水底線路のいずれか一分野に関する専門的能力 - 〇
3.伝送交換設備及び設備管理(伝送交換主任技術者に限る)
伝送交換設備の概要並びに当該設備の設備管理及びセキュリティ管理 〇 -
4.線路設備及び設備管理(線路主任技術者に限る)
線路設備の概要、当該設備の設備管理及びセキュリティ - 〇
5.法規
(2)有線通信事業法及びこれに基づく命令 〇 〇
(3)電波法及びこれに基づく命令 〇 〇
(4)不正アクセス禁止法、電子署名及び認証業務に関する法律 〇 〇
(5)国際電気通信連合憲章及び国際電気通信連合条約の大要 〇 〇
*電気通信国家センターより作成
試験科目を見ればわかるのですが、伝送交換主任技術者、線路主任技術者のいづれにせよ、出題される分野の範囲が相当に広いことが分かります。問題数も多いですし、複雑な出題構成となっています。ですので、工事担当者資格や、無線従事者などの資格を保有している場合は免除制度があり、免除される科目があるので有効活用しましょう。
電気通信主任技術者の合格率の推移
伝送交換主任技術者の合格率の推移
電気通信主任技術者の伝送交換主任技術者の分野での過去6回分の合格率は平気して26.58%となっています。合格率から見ると、伝送交換主任技術者の合格率は低く、難易度が高い試験なように思えます。ただここ3年分の合格率は、令和元年度の1回目を除くと、23から29%と高く推移していっていることがわかります。
線路主任技術者の合格率の推移
線路主任技術者の合格率は過去6回分を平均して27.62%となっていました。平均すると、線路主任技術者の方が、伝送交換主任技術者の試験より合格率は低くなっていますが、線路主任技術者の合格率は30%台の合格率の回もあれば、15%台の回もあり、年度によって非常に難易度が変わってくる試験といえるのではないでしょうか。このような傾向もあり、伝送交換主任技術者の方が、線路主任技術者よりも受験者数が多くなっているのかもしれません。
電気通信主任技術者の難易度
先ほど電気通信主任技術者の合格率についてを説明しましたが、次に電気通信主任技術者の試験内容からどの程度の難易度なのかということについてを調査します。難易度はもちろん受験者のバックグラウンド(大学で電気通信を研究等)によって難易度の感じ方は異なるでしょう。ですので、ここでいうような難易度は電気通信主任技術者の試験科目で出題されるような内容をこれまで勉強していなかった人から見る難易度を考察します。
ただ、よく電気通信主任技術者の資格は他の情報処理系の資格、電気保安の資格(電験)の難易度と比較されます。応用情報技術者とネットワークスペシャリストの間くらいの難易度ともいわれますし、電験3種より少し難しいとも、電験3種より暗記が多いので、簡単ともいわれる資格です。少なくとも電験1種のような何年もかけて合格を目指すような資格ではないようです。
法規の難易度
法規の科目は基本的に電気通信事業法、不正アクセス禁止法等をはじめとした条文暗記がほとんどで、暗記科目とされています。出題形式が正誤問題、穴埋め問題なので、正しい条文暗記ではなく、文脈を覚え、要点を整理していることが肝要でしょう。暗記科目と呼ばれるだけあって初学者にもとっつきやすい科目ではないかと思えます。
テキストとしては、電気通信主任技術者試験対策研究会が出版している『電気通信主任技術者法規試験対策』が有効で、あとは問題集を買い、演習をこなすことで対策可能なレベルです。過去問を解いていくとわかるのですが、頻出の条文が必ず出てきます。取りこぼしのないように、問題集を解きまわすことは有効でしょう。
ですので、法規の科目に関しては、どうしようもなく難しい、とっつきにくい科目とは言えず、勉強量がそのまま得点につながりやすいという意味で、難易度は低い科目なのではないでしょうか。
設備及び設備管理の難易度
4科目の中でもダントツで難しい科目とされるのがこの「設備及び設備管理」です。何が難しいとされるのかというと、出題内容が実務レベルで、参考書があまりやくに立たないことがあり、馴染みのない通信設備の技術仕様等を勉強しないといけないからです。それゆえに初学者にとっては難易度が高いと感じる科目となっているようです。
実務レベルの技術用語が登場してきますし、用語を一語一語暗記していくのではなく、体系的に勉強していくことがカギで、信頼性の計算のような計算問題もその解法を身に着けておくことが重要でしょう。信頼性の計算の対策は参考書よりWEBサイトでの演習が重要ということを良く耳にしますが、何度も解き倒すことが重要でしょう。
伝送交換の場合は後の専門的能力の問題で出題されるような問題を浅くしたような問題が半分程度出題されます。また、出題範囲があまりにも広いので、試験までに勉強が間に合わなかったということもよくある科目です。情報セキュリティや信頼性計算のような問題も同時に出題されます。
線路の場合はやたらと光ファイバー、海底ケーブル、土木工事などのような工事に関する問題が出題されます。光工学や電気電子、半導体などに関する知識を問うような問題が多く出題され、範囲がとても広いです。ですが、あまりまとまった参考書がないのが残念です。
専門的能力の難易度
伝送交換の場合、工事担当者の資格を保有しているならばトラック系の計算問題等をはじめ、解答できる問題が多くあります。しかし、そうでなければ非常に難しい内容で、数学の知識も問われるような問題がありますので、数学から離れている場合難しい内容と感じることもあるようです。ですので、通信線路、通信土木、水底線路の3科目のうち、1科目を自信のあるものを選択するとよいでしょう。
線路の場合、なにより支持を集めていた過去問問題集が絶版になったこともあり、対策が難しいのがこの科目です。それゆえにネット上の情報や、Optipediaの情報から対策を練る必要があります。勉強のしにくさでいえば難易度は高いといえます。
電気通信システムの難易度
こちらも工事担当者の資格を保有していれば、工事担当者の知識を使って対策することが十分に可能です。しかし、工事担当者の資格を保持していない場合は出題範囲が広いために難易度が高くなっているようです。論理回路の計算、アーラン、呼損率の計算、dbの計算などのような算数で解けるような問題もあり、過去問演習を通して計算方法や傾向を掴んでおくと、難易度はぐっとさがります。
まとめ
以上のように電気通信主任技術者の試験科目、合格率、難易度をについてを紹介してきましたが、難易度というのは受験者のスキルや知識によって相当に感じ方が異なるものです。電気通信主任技術者資格は合格率や試験内容を見ると、難易度が高い試験であるということができますが、しっかりと、過去問を演習することで対策が可能な試験です。それに合格後には、電気通信設備の保守点検におけるプロフェッショナルとしての免許を得ることができます。
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