水力発電は、水車による運動エネルギーによって電気を生み出す仕組みを持っています。そんな水力発電で使用する水車にはいくつか種類があり、それぞれに特徴があるのです。この記事では、そんな水力発電の水車の種類についてを紹介します。水力発電の水車の種類は第三種電気主任技術(電験3種)試験の電力にも出題されています。

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水力発電:水車の種類の分類その①水車の種類別分類

水力発電で使用する水車は、その動作原理によって、衝動水車と反動水車に分類することができます。この分類法に基づき、いくつか代表的な水車の種類をまとめると以下のようになります。

水力発電で使用する水車の種類の分類

水力発電で使用する水車の種類の分類

この分類で出てきた衝動水車・反動水車とは一体どんな仕組みを持っているのでしょうか。

水力発電の水車:衝動水車とは?

衝動水車というのは、水車の羽の部分にノズルで水をぶつけることで回転力を得ることができる水車のことを指します。衝動水車の原理は、水の持つ位置エネルギーを運動エネルギーに変換する原理を利用しています。もしくは、位置水頭を速度水頭に変換する仕組みともいえますね。位置エネルギーや位置水頭などについては「水力発電の仕組みを概念図とエネルギーの仕組みで解説」という記事をご参考ください。

上の図の通り、衝動水車に分類される水車は、ペルトン水車です。他にはクロスフロー水車やターゴインパルス水車というのも存在しますが、ここでは紹介しません。

水力発電の水車:反動水車とは?

反動水車というのは、水車を覆う外装を指すケーシングを通過する流水の圧力エネルギー(圧力水頭)で、水車の主軸のつながりを指すランナを駆動させることで回転力を得る水車の事を意味します。反動水車の特徴としては、ランナ出口から放水面までを結ぶ末広型の接続管を意味する吸出菅(ドラフトチューブ)を設置することで、ランナと放水図面の位置エネルギーが損失せずに、有効落差として活用できるという点です。

反動水車の種類としては、フランシス水車、斜流水車(デリア水車)、プロペラ水車(カプラン水車)、チューブラ水車等があります。フランシス水車は反動水車で、プロペラ水車の分類として斜流水車、チューブラ水車、ストレートフロー水車があります。

水車の調速機(ガバナ)とは?

水力発電では、負荷が増幅すると、水車の回転速度が低下してしまいます。また、負荷が急激すると、水車の回転速度が上昇します。回転数が変化すると、何が起こるのかというと、発電周波数が変化したりといった問題が生じます。そうなると、発電の安定性に影響がでてしまいます。この回転数変動が起きないように流入制御の機能を持っているのが、ガバナと呼ばれる調速機です。調速機には、水車の種類(衝動水車、反動水車)によって役割が変わってきます。

衝動水車の場合の調速機

ペルトン水車のような衝動水車では、ニードル弁の調整によって、流入水量の調整を行います。これによって回転速度を限定した値で保つことが可能になります。

反動水車の場合の調速機

フランシス水車のような反動水車では、ガイドベーンの開度調整によって流入水量を調整します。これによって回転速度を限定した値で保つことができるようになります。ガイドベーンというのは、水車ランナへ入る直前にある羽根のことを指します。

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水力発電で使用する水車の種類その②それぞれの水車の違い

水力発電で使用される水車のそれぞれの種類がどんな特徴を持っているのかについて紹介していきます。

ペルトン水車とは?|水力発電の水車の種類

ペルトン水車

ペルトン水車(経済産業省HPより*以下同様)

水力発電の水車の種類の一つで、衝動水車に分類されるペルトン水車は、主に200[m]以上の高落差で小水量向きの水車です。水をノズルから噴出させて、おわんのような形をしたバケットという羽根水車にぶつけることで回転力をえます。ノズル管内にある流量調整のための針弁(ニードル弁)でノズルから放射する流水量を加減することが可能です。仕組みはとてもシンプルで、水鉄砲の力で車輪を回転させるイメージです。

つまり、ペルトン水車の特徴は、出力調整において、部分負荷運転を行っても効率の低下が起きにくい点で特徴的です。それゆえにランナや腐食摩耗部の点検が容易となっています。

ペルトン水車で重要なのはニードル弁に加えて、デフレクタと呼ばれるノズルの放射水がバケットに当たらないように放射水をそらす装置設置されていることです。デフレクタに加えて、急停止を可能にするジェットブレーキを有していることもあります。

フランシス水車とは?|水力発電の水車の種類

フランシス水車

フランシス水車

水力発電の水車の種類の一つで、反動水車に分類されるフランシス水車についてみていきましょう。フランシス水車は、主に50~200[m]の中落差~高落差向きの水車です。フランシス水車は、適用できる落差の範囲が広範囲で、小容量から大容量のものまで適用しています。フランシス水車は、ランナの羽根(ランナベーン)の角度が固定されていて、ケーシングから水車ランナへ入る直前にある羽根である複数枚のガイドベーンの間度で流入水量を調整する仕組みをもっています。

専門用語が出てきてイメージしにくいかと思われますが、フランシス水車はボールを紐につけて振り回したときに紐が短いとより早く回転する理論と同様です。

フランシス水車の特徴としては、他の水力発電の水車よりも、使用水量が大きく、部分負荷運転時の効率が悪く、比速度が大きいほどこの傾向がはっきりするという点です。その一方、フランシス水車は可能な限り高い効率=最高効率が高いという特徴を持っているので、広く普及した水力発電の水車といえます。

なぜ、フランシス水車が最高効率を有しているかというと、吸出管を水車出口に設置することで位置エネルギーとして回収することができ、落差を有効落差とすることができるからです。この点、衝動水車では吸出管は適用されません。

また、フランシス水車は、ランナ内部で流水が半径方向から軸方向に向きを変えて流出することができ、水車を逆回転することでポンプとしても利用することができるのです。

斜流(デリア)水車とは?|水力発電の水車の種類

デリア水車

デリア水車

水力発電の水車の種類の一つで、反動水車に分類されるのが斜流(デリア)水車(以下デリア水車)です。デリア水車は主に40~180[m]の中落差向きの水車で、ランナ内で流水が斜めに通過する水車です。一般的に、デリア水車はランナベーンが可動な構造で、フランシス水車と後にみるカプラン水車との中間的な役割を持つ水車です。

デリア水車の特徴としては、流量変化に対応してランナベーンの角度を調整することができ、高効率な運転が可能になるという点です。これは、デリア水車の羽根が可動だからこそです。デリア水車では設計の際にランナベーン中心軸の角度が斜流角となるようにします。使用水量が大きい場合だとこの値は大きくなりますが、30度、45度、60度、70度のものが多く採用されています。この角度によってデリア水車の比速度は決定されます。

プロペラ(カプラン)水車とは?|水力発電の水車の種類

カプラン水車

カプラン水車

プロペラ(カプラン)水車は、水力発電の水車の種類の一つで、反動水車に分類される水車です。カプラン水車は、主に5~80[m]の低落差~中落差向きの水車です。カプラン水車は、ランナ内部で流水が軸方向に通過する仕組みをもっています。

ランナベーンの部分負荷特性を向上させるために、ランナベーンを可動構造にしたプロペラ水車をカプラン水車と呼びます。このことがカプラン水車の特徴です。フランシス水車に似てはいますが、カプラン水車はフランシス水車に不可能な低落差に対応しており、有効落差の低い発電所効率低下が少ないのです。このような特徴から、変落差、変負荷の水力発電に適しています。

カプラン水車のデメリットとしては、ある程度の有効落差を超えた高さに適用しようとした場合、羽根の角度を調整するためのランナ先端部分が大型化させないといけなくなる点です。結果として、水の抵抗を強く受けて、エネルギー損失につながってしまいます。

チューブラ水車とは?|水力発電の水車の種類

チューブラ水車

チューブラ水車

チューブラ水車は、水力発電の水車の種類の一つで、反動水車に分類されるのがチューブラ水車(円筒水車)です。チューブラ水車はその形状が横軸円筒型なので、円筒水車とも呼ばれます。チューブラ水車は、主に20[m]以下の超低落差向きの水車です。最近大型の水力発電に代わる、いわゆる小水力発電の代表的な水車がチューブラ水車です。

チューブラ水車は、ランナベーンが可動で、カプラン水車と同様の特性を有し、部分負荷特性を向上させます。チューブラ水車は、発電機と水車が一体化した水中式発電機一体型水車と、発電機をケーシング外に設置するタイプがあります。チューブラ水車は小容量ではランナベーンが固定式で、大容量では可動構造となります。他の水車とは異なり、渦巻ケーシングがないのが特徴なのと、構造が単純がゆえに建設費用が安いのが特徴です。

チューブラ水車で使用される発電機は、直流励磁装置が不要で、並列投入操作も容易な誘導電動機が使用されることがあります。また、チューブラ水車には、増速装置が設置されていることがあります。

まとめ

以上のように、水力発電で使用される水車の様々な分類、種類についてを紹介してきました。水力発電で使用される水車にはそれぞれに適用する落差によって特徴が異なります。何がどの落差で、どんな特徴を有しているのかを把握しておくことは第三種電気主任技術者試験ではもちろんのこと、日常生活でも水力発電に関するニュースを見る際に約に立つかもしれません。とくに最近では、チューブラ水車を使用した小水力発電の建設は活発な動きを見せています。