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水力発電はエネルギー資源が乏しい日本において重要なエネルギー供給源となっています。水力発電は全国各地に存在していますし、テレビや新聞などで水力発電建設の様子を目にしたことは多いのではないでしょうか。

水力発電がどうして流水から電気というエネルギーを生み出すことができるのかを気になりませんか?そこで、第三種電気主任技術者の電力科目にも出題されるような流水エネルギーの仕組みや、水力発電のメリットとデメリットを紹介します。

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水力発電の仕組みとは?流水エネルギー変換の仕組み

水力発電の仕組みの図

まず簡単に水力発電の仕組みを図で示すと以下のような図で示す、設備とエネルギーの関係になります。

水力発電によって取水口(水を河川から取り出す口)から落差を利用(位置エネルギー)し、水車やタービンを使用することで運動エネルギーに変換します。そして圧力エネルギーを経て、その後、生み出した運動エネルギーを発電所の発電機によって電気エネルギーに変換し、変圧器を通して電気を供給します。水力発電はこのように様々な設備とエネルギーが織り交ざって電気を生み出しているのです。

そんな水力発電には構造と、運用方法でいくつかの種類があります。構造的な分類としては「水路式発電所」「ダム式発電所」「ダム水路式発電」、運用上の分類としては「流れ込み式発電所」「調整池式発電所」「貯水池式発電所」「揚水式発電所」があります。水力発電の種類とそれぞれのメリット・デメリットに関しては☞「水路式発電の7つの種類とは?構造面・運用面から解説!」という記事を参考ください。

水力発電の仕組みを流水エネルギー・水頭・ベルヌーイの定理で解説!

水力発電の持つ流水エネルギーの仕組み

先ほどの水力発電の仕組みの図で示したように、水の持つエネルギーは、「位置エネルギー」「圧力エネルギー」「運動エネルギー」となります。これらの物理的な関係を抑えると水力発電の仕組みを物理的にとらえることができます。下図のように高所に設置された水力発電所があるとします。水槽の点Aで静止している質量m[kg]の水についてを考えます。水力発電は、位置エネルギーと運動エネルギー、圧力エネルギーに変換される発電でした。

上の図にあるような点Bにおける流水エネルギーをとらえると水力発電の仕組みが見えてきます。ここで、以下のように各位置を定義します。

  • 位置エネルギー
    • 位置エネルギーは、重力の作用によって基準面まで落下し、その時重力が水に対してする仕事は、水の質量m[kg]と重力加速度g[m/s^2]と、基準面からの高さh_a[m]の積mgh_a[J]で表すことができるのです。この値のことをA点の位置エネルギーといいます。A点までの位置エネルギーはmgh_a[J]となります。同様に基準面からのB点までの高さをmgh_b[J]となります。A点から基準点まで落下した水はエネルギーを保有し、物体に対してmgh_a[J]分の仕事をすることになるのです。点Aより点BはAより低い点なのでBの位置エネルギーは減少しているのです。
  • 運動エネルギー
    • 点Aと比較して、点Bにおける水は落下している最中です。この時、運動エネルギーを持っているのです。B点の流速をV_b[m/s]とします。この時の点Bは運動エネルギーを有しています。その速度は\frac{1}{2}mv^2[J]と表すことができるのです。なぜ運動エネルギーが1/2になるのかというと、ニュートン力学による物体の質量と速さの二乗に比例するからです。
  • 圧力エネルギー
    • 上図のように管の中を水が流れる場合、圧力エネルギーが発生しています。その時の圧力エネルギーの値は、水の密度を\rho[kg/m^3]とし、水圧をp[Pa]とすると、点bの圧力エネルギーはm\frac{p_b}{\rho}と表すことができるのです。

水力発電における位置エネルギー、運動エネルギー、圧力エネルギーの関係は、エネルギー不変の法則(エネルギーの総量は、形を変えても一定)によって、上水面点Aにおける全エネルギーは、B点における全エネルギーに等しいので、次のような式が成り立ちます。

    $$mgh_a=mgh_b+m\frac{p_b}{\rho}+\frac{1}{2}mv_b^2.....(1)$$

水力発電は、位置エネルギー・運動エネルギー・圧力エネルギーを持つ流水の性質を利用した発電方法なのです。

水力発電の仕組み:3種のエネルギーを高さに変換した水頭とベルヌーイの定理

先ほどの(1)式は流水が持つエネルギーである、位置エネルギー・運動エネルギー・圧力エネルギーの関係式でした。水力発電の流水エネルギーを利用した仕組みはこれらの性質において、高さと水の質量で決まるのです。このことを解き明かすには、ベルヌーイの定理を用います。先ほどの(1)をmgで除すと、以下のような式が成り立ちます。

    $$h_a=h_b+\frac{p_b}{g\rho}+\frac{v_b^2}{2g}[m]......(2)$$

(2)式において、各校はそれぞれ次のような意味を有しているのです。

h_b=位置水頭・・・・基準点からの高さ[m]

\frac{P_b}{g\rho}=圧力水頭・・・・水の圧力エネルギー[J]を高さ[m]に変換したもの

\frac{v_b^2}{2g}=速度水頭・・・・水の運動エネルギー[J]を高さ[m]に変換したもの

これらの単位は全て[J]から[m]に換算されています。単位当たりの流体がもつ位置エネルギー・運動エネルギー・圧力エネルギーを表しています。水が落下する途中のどの位置であっても、位置水頭・圧力水頭・速度水頭の総和(全水頭)は常に一定なのです。少し補足すると、実際は摩擦が発生し、熱として消失するエネルギーもあります。このことを損失水頭といいます。つまり、「位置水頭+圧力水頭+速度水頭+損失水頭=一定」となるのです。このことをベルヌーイの定理といいます。ベルヌーイの定理がエネルギー保存の法則を示していることがわかります。

水力発電の仕組みは、ダム等を使用することで高所から水を落下(位置エネルギー)させ、生じる運動エネルギー・圧力エネルギーによって水車を回転させることで発電を行う仕組みになっていることが物理的に分かります。つまり、冒頭で触れた水力発電の仕組みは水を落下させる高さと水の質量によって決まるのです。

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水力発電のメリットとは?

以上のように水力発電の仕組みを概念図と物理的な理論で仕組みを紹介しましたが、実際に水力発電にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリットその①再生可能エネルギーで環境にやさしい

今や、日本のみならず、電力供給におけるトレンドは再生可能エネルギーです。エネルギー基本計画においても2030年に再エネの比率を22~24%にし、そのうち水力発電を8.8~9/2%、電力量でいえば939億~981億円にすると発表されています。水力発電は非常に重要なベースロード電源としての役割を持っています。さらに近年は認定量が増加傾向にありますし、非常に非常に期待がかかる発電です。

先ほどの水力発電の仕組みで見たように発電の過程において石炭・石油などの二酸化炭素などを排出する資源は使用していないことがわかります。水力発電は水の落下の高さと水の質量が必要で、環境にやさしい資源を使用しているといえます。特に日本は水という純国産の資源を豊富に持っていますので、再利用可能なエネルギーで、かつ環境にやさしい資源を使用しているのが、水力発電のメリットの一つでしょう。

メリットその②小水力発電に大きな期待

これまでの水力発電は巨大なダムを建設した大規模な水力発電が主流でした。しかし、近年小水力発電は増加傾向にあります。小水力発電は河川の流水や上下水道などの水源を利用し発電する水力発電です。小水力発電はまだまだ未開発地域での開発が可能(2016年時点で約2700地点、約1000万kW)なので、期待がかかっているようです。

小水力発電はFITの対象にもなっているのでビジネスチャンスの拡大とともに認定量も増加していくでしょう。小水力発電のFIT件数は、今後3年間で約100カ所、約20万kWになるとの予測が立てられているようです。

水力発電の認定量の推移(経済産業省資源エネルギー庁参照)

水力発電の認定量の推移(経済産業省資源エネルギー庁参照)

メリットその③揚水式発電所という巨大蓄電池

現在のベースロード電源の一つである原子力発電所は一度稼働したら電力需要の少ない夜間であっても運転し続けなければなりません。しかし、夜間の軽負荷時の余剰電力を使用することで下部の貯水池の水を上部の貯水池に揚水することができる水力発電があります。それが揚水式発電所です。揚水式発電所は電力貯蔵、ピーク負荷対応が可能なので需要に応じた電力供給が可能なのです。

まるで揚水式発電所は蓄電池のような役割を持っているので、十分にベースロード電源としての役割を果たせそうです。このような揚水式発電所があるがゆえに水力発電所のメリットの一つとされています。下の図を見ると明らかに揚水式発電所のピーク負荷対応が他と比較して優れているかわかります。

揚水式発電所の発電

揚水式発電所の発電(出典:資源エネルギー庁参照)

水力発電のデメリットとは?解決策はあるのか?

デメリットその①環境破壊につながる恐れがある

現在、日本において最も建設件数の多い水力発電の種類は「ダム水路式発電所」です。ご存知の通り、ダム建設は近隣住民の反対や巨額な建設費用が掛かります。それだけでなく、上流地域の水源の水没、下流部水量減少、生態系破壊などを生じさせる恐れがあるのです。ダム建設は初期投資額が巨額で、投下資本回収が難しいにもかかわらずこれまでのダム建設は増加の一途にありました。

しかし近年では新規のダム建設は減ってきており、脱ダムを政府は掲げているようです。いずれにせよ、過去に建設してきたダムが及ぼす環境破壊は存在し続けます。近年のこのデメリットを解決するための解決策としては小水力発電へのシフトが挙げられますし、ダム建設を中断する動きも出てきています。

デメリットその②小水力発電の建設は時間とお金のコストがかかる

先ほど水力発電のメリットの一つとして挙げた小水力発電ですが、この小水力発電にも課題・デメリットがあります。小水力発電をこれからさらに開発していこうとしていますが、未開発地点が河川上流や山間部地域にあるために、山を切り崩したりしないといけないのでそれなりの建設費用がかかってきます。

これに加えて、「河川法」の規定による制約があり、流水を利用する権利「水利権」の権利関係の調査や流量調査をする必要があるがゆえに調査に時間がかかってしまうのがデメリットです。

水力発電のこのデメリットを解決する解決策としては、河川法の改正と自治体による小水力発電の建設でしょう。小水力発電で使用する浄水場・上下水道の水は自治体に権利が属すので、自治体が小水力発電を推進することも考えられます。さらに、2013年には河川法改正で出力1000kw未満の小水力発電に関しては認可手続きが簡易化されましたが、今後の動向には注目です。

デメリットその③雨量に左右されてしまう。

太陽光は日射量、風力発電は風量に発電量が左右されるようにまた、水力発電は水量=雨量に左右されています。渇水の時期が継続すれば当然水力発電の発電量は減少します。ただ、河川やダムの水量は貯水池を建設するものがあったりと一概に雨量によって発電量が減少するとは言い切れません。その点水力発電の発電は安定的なものとなっています。水力発電の発電は山間部で行われ、都市部に送電されることは多いです。その際に送電ロスを発生しがちなのは水力発電のデメリットともいえます。

水力発電のこのデメリットの解決に向けた解決策としては、貯水池式水力発電のような貯水池を活用した豊水期に水を貯え、電力需要の大きい夏季、冬季に貯水した水を使用し電力を供給する発電方法があります。水力発電には用途に応じた様々な対応がなされているのです。

まとめ

以上のように、水力発電の仕組みを概念図とベルヌーイの定理を用いたエネルギーの関係の観点から紹介してきました。水力発電にはメリットとデメリットがあり、一長一短な発電です。しかし、2030年には再生可能エネルギーを主力エネルギーとして位置づけています。今後水力発電のデメリットで挙げたようなデメリットを解決する動きが加速する可能性も十分にあります。

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