建設工事の現場では現場の工程や安全、品質等を管理する施工管理者はなくてはならない存在です。施工管理者はその人の誠実さや技術力、経験等を信頼され、工事現場に配属されます。施工管理者の資格や技術、経験が発揮できるように建設業法では施工管理者の果たすべき役割や現場権限を「主任技術者」と「監理技術者」に分けて定めがあります。
一見すると、いまいち両者の違いが分かりにくいですが、主任技術者と監理技術者、それぞれにどのような違いがあるのかを解説します。まずは、主任技術者についてを見ていきましょう。
主任技術者と監理技術者の違いとは・・・
工事規模で主任技術者と監理技術者は区別できる
建設業者にはある義務があります。それは建設業法26条1項に基づく、全ての工事現場に必ず技術者を置かないといけないという義務です。ここで出てくる技術者というのが、まさしく「主任技術者」です。
そしてH28.6.1改正施工後、建設業法26条第2項では、発注者から直接工事を請け負った元請建設業者は、その下請け請負金額が4000万円以上(建築一式工事の場合は6000万円)となる場合は、監理技術者を置かないといけません。
つまり「主任技術者」と「監理技術者」の違いとは、工事規模の区別にあるのです。
主任技術者と監理技術者の違いは、主任技術者が小さい規模の工事、監理技術者が大きい規模の工事という認識ですっきりするでしょう。
主任技術者と監理技術者と現場代理人
また、主任技術者、監理技術者と合わせて違いがややこしいものとして「現場代理人」というのがあります。しばしば、主任技術者と監理技術者と間違えられることがあります。現場代理人の仕事は、現場の請負人の仕事を代行するような仕事で、施工管理系の仕事だけでなく、契約関係の整理などバックオフィス系の仕事もすることがあります。現場代理人は、主任技術者や監理技術者とはまた違う存在です。
主任技術者と監理技術者と現場代理人の違いを表にまとめると以下のようになります。
種類 役割 工事規模
主任技術者 施工計画作成、工程管理、品質管理、安全管理などの適正な工事施工の確保 工事規模が小さい工事
監理技術者 主任技術者業務に加え、
建設工事の施工にあたり、下請け業者を適切に指導監督特定建設業者が元請として4000万円(建築一式工事の場合6000万円)以上を請負
現場代理人 工事現場に常駐し、施工や、契約関係事務などの役割 全般的な工事(公共工事の際には契約が必要)
施工管理の資格の1級と2級という区分は主任技術者か監理技術者かである
例えば、1級電気工事施工管理技士という施工管理の資格のように、頭に〇級施工管理技士という資格があります。この〇級は1級と2級に分かれているのですが、1級が監理技術者のことで、2級が主任技術者のことをさします。なので、1級電気工事施工管理技士は監理技術者と主任技術者になれますし、2級電気工事施工管理技士の資格は主任技術者になれる資格なのです。これらを表にまとめると以下のようになります。
区分 内容
1級 建設業法により特定建設業の営業所に置かなければならない専任の技術者や、工事現場ごとに置かなければならない主任技術者および監理技術者になることができる。監理技術者であり続けるためには更新が必要である。
2級 建設業法による一般建設業の営業所の専任技術者や、工事現場における主任技術者となることができる。
ここで出てくる専任技術者とは、建設業法に定める営業所ごとに一以上の専任技術者を置くこととしている規定のもとに、適正な工事の履行を技術的側面などから確保するような役割を持っています。同じ施工管理技士なのに、主任技術者やら監理技術者やら専任技術者とこんがらがるものは多いですが、工事の金額や規模で見てみるとある程度わかりやすいですね。
一般建設業許可と特定建設業許可の違い
そもそも一定範囲の建設工事を行うためには建設業法に基づき、それに従った許可を取得しなければなりません。その許可の区分に、一般建設業と特定建設業なるものが存在しています。
一般建設業許可とは、これを受けることによっておおよそ全ての建設工事を施工することができるようになります。建設工事会社の会社概要を覗いてみると、大体決まって一般建設業許可の記載があります!
一方、特定建設業許可とは、発注元から元請業者として、工事の合計金額が4,000万円以上の工事を下請けに出す場合必要になります。
ちなみに、「軽微な建設工事」と呼ばれる請負金額500万円未満の工事に関しては建設業の許可は必ずしも必要とは限りません。
ですので、おおよその建設工事における専任技術者については2級の施工管理技士(例えば、2級電気工事施工管理技士)で対応可能ではありますが、ゼネコンのような元請け業者の専任技術者や、商業施設やオフィスビルと言ったある程度規模の大きな現場で活躍するには、例えば、1級電気工事施工管理技士のような1級の施工管理技士の資格が欠かせない資格なわけです。
主任技術者と監理技術者の専任・兼任について:「専任」の明確化とは?
主任技術者と監理技術者に関する専任の意味とは?
専任という意味は、主任技術者と監理技術者が担当する工事現場以外の現場との兼任を認めないという意味です。専ら任せられるという意味で工事現場で主任技術者と監理技術者は専任されます。このことを「工事現場ごとに専任する」といいます。「また、下請け工事であっても主任技術者の専任は必要になります。「営業所の専任技術者」は、専任現場の主任技術者と監理技術者にはなれません。
ただし、ここでいう主任技術者と監理技術者の専任は一定規模以上の工事の場合での専任です。ここででる一定規模以上の工事というのは、、「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事」で工事一件の請負金額が 3,500 万円以上(建築一式工事は 7,000 万円)以上のものと定められています。この工事には公共機関ではない、民間工事も含み、個人住宅以外のほとんどの工事が対象になっています。
主任技術者と監理技術者の兼任が例外に許される場合
一つの同じ建設業業者と契約する場合を念頭において、「契約工期の重複する複数の請負契約に関する工事」である場合、「工事対象の工作物に一体性があると認められる」場合、例外的に主任技術者、監理技術者の兼任が認められます。兼任が認められる場合、複数の工事を一つの工事とみなすことで複数工事を管理することが可能になるのです。
国土交通省が改正する専任の明確化とは?
2018年12月3日に国土交通省の通達で「主任技術者又は監理技術者の「専任」の明確化について(改正)」がなされました。この通達を要約すると、i-Constructionなど施工管理など含む建設業のIT化推進が加速し、監理技術者、主任技術者等はますますその最新技術の研鑽に力を入れるようにとの提言が記載されていました。
このような建設業のICT導入の流れ等を受けて、監理技術者の専任の明確化がなされました。専任という言葉は常駐なのか非常駐なのかという期間に関する定義が不明確なところがありました。しかし、専任の明確化により、「他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事することを意味するものであり、必ずしも当該工事現場への常駐を必要とするものではない。」
との専任の意味の明確化がなされました。このような選任の明確化によって、監理技術者等は試験の勉強や最新技術の研鑽のために短期間工事現場を離れることは目的に照らして差支えないことが明確化されました。(国土交通省発表資料、通達内容)
監理技術者、主任技術者と専門技術者って?
用語が非常にややこしいですが、専任技術者とは別に「専門技術者」という用語も監理技術者、主任技術者に関する用語です。
専門技術者とは一式工事(土木一式、建築一式)を施工するときに、工事現場に配置する監理技術者、主任技術者とは別で、専門工事(大工工事、電気工事など建設業許可29業種のそれぞれの工事)に関する技術者を配置する必要があり、このような技術者のことを専門技術者といいます。
ただ、この専門技術者の配置に関しては原則で、例外的に一式工事の主任技術者、監理技術者が施工する専門工事に関する資格(例えば、土木工事施工管理技士、電気工事施工管理技士等)を保有していれば、兼任することが可能になります。
つまり、一式工事において、監理技術者、主任技術者とは別に専門工事技術者を原則は配置する必要があり、例外的に監理技術者、主任技術者の兼任が可能になります。
まとめ
以上のように、監理技術者、主任技術者の違い、専任の意味や、専門技術者についてを紹介してきましたが、用語がとてもややこしいです。このような違いに関しては特に建設業許可申請の際などに確認する必要があります。特に建設業許可申請を支援している行政書士事務所等にアドバイスを受けるさいの参考になればと思います。