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VPPとは?その定義

VPP注目の背景

VPPとは、(Virtual Power Plant)の略語で、日本語にすると仮想発電所となります。仮想発電所は需要家側の取り組みで実現できる新しいエネルギーシステムなのです。

これまでは電力会社からの電力供給という集中型の電力需給でしたが、現在では分散型のエネルギーシステムが構築されるようになりました。特にこのことが重要視され始めたのは東日本大震災時の停電被害の問題からでした。分散型の電源を電力会社以外が有する事の重要性が高まっています。VPPの推進が進んでいく背景をまとめると以下のようになります。

  • 需要家の分散エネルギー資源の拡大(省エネ、創エネ、畜エネの三位一体)
  • IoTによる技術革新
  • 電力自由化

ZEBの仕組み(創エネ、省エネ、畜エネ)

このような世間的な趨勢の中でVPP構想の実現可能性が高まったのです。第5次エネルギー基本計画にもそのことが示されており、分散型エネルギーシステムの構築と発展は日本政府の政策目標ともいうべき位置づけにあるのです。

VPPはあたかも発電所!その定義

そうした中注目されるようになったのが、VPPでした。VPPは上の分散型エネルギー資源の発電リソースを統括的に管理する制御システムをIoT等を駆使することによりあたかも仮想の発電所のように機能させるのです。このことが由来となりVPP(Virtual Power Plant)と呼ばれているのです。*分散エネルギー資源(Distributed Energy Resources:DER)

VPPの簡易的な説明は経済産業省のYouTube動画にて解説されてあります。

この考え方はマイクログリッドでも活用可能であり、発電リソースにも太陽光発電だけでなく、デマンドレスポンスや蓄電池設備のような先進的な技術も登場しています。このような小規模発電リソースを有機的につなげ、制御システムを構築することが仮想発電所の要点なのです。

VPPの定義としては、「複数の自家発電、再生可能エネルギーや蓄電池を集約してあたかも大きな発電所のように電力需給に反映させるビジネス」と定義されています。

VPPの仕組み

VPPはエネルギー需給の重要施策としての位置づけをなされることがありますが、VPPの仕組みはどのようになっているのでしょうか?

VPPの仕組み

VPPの仕組み、イメージ(出所:資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科)

アグリゲータービジネスの仕組み

VPPが成立するためには、需要家により生み出された電力使用状況に応じた監視・制御を行う必要があります。そこで、監視・制御を行うものの事を図中真ん中に位置している「アグリゲーター」といいます。

アグリゲータービジネスの仕組み

アグリゲータービジネスの仕組み(出典:資源エネルギー庁)

アグリゲーターという意味は英語でaggregatorとなりますが、「集める者」という意味になり、電力業界では、何を集める人なのかというと、「ネガワットを集める者」になるのです。ネガワットというのは、「負の消費電力を意味し、需要家の節約により余剰となった電力を発電したこととみなす考え方」を指します。

つまり、アグリゲーターの仕事は、住宅やビル等の節約状況を監視・制御することで節電状況に応じて取引先の配線事業者、小売電気事業者等へ報告し、住宅やビルに報酬を支払うのです。詳細なデマンドレスポンスに関する記事は☞「デマンドレスポンスとは?

VPPにおける2種類のアグリゲーター

VPPにおいては、アグリゲーターには2種類います。リソースアグリゲーター、アグリゲーションコーディネーターの2種類です。

リソースアグリゲーターとは

リソースアグリゲーターの顧客は、再エネ発電事業者、需要家、小売業者に当たり、リソースアグリゲーターの仕事は以下のようになります。

  • 余剰電力の蓄電による再エネ電源接続サービスの提供
  • エネルギーマネジメントサービス、蓄電池リース
  • 電力の販売仲介
  • インバランス調整

アグリゲーションコーディネーター

アグリゲーションコーディネーターの仕事は、リソースアグリゲーターをつなぐことで全体最適に寄与する需給バランス調整機能を提供します。

  • リソース評価(リソースアグリゲーターの技術評価)
  • リソースの整形、マッチング、実運用の監視・モニタリング。
  • アグリゲーションビジネスに資する技術基盤の提供

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VPPにはどんなメリットがあるのか?

VPPにはさまざまなメリットがありますが、そのうち3つを紹介します。

VPPのメリットその①コスト削減、電力需要負荷標準化

VPPは前述の通り、分散型エネルギー資源をつなぎ合わせ、一つの発電所のような機能を有する仕組みでした。ですので、火力発電、原子力発電等の一つの発電所を近隣に建設するよりコストを削減できるのです。これは政府にとってのコストともいえます。また、遠隔から送電線を敷き、需要家に届ける必要もないので、電気料金の削減にもつながるでしょう。

電力の使用量は時間帯や季節により変動するものです。こうした差分を埋めるのが電力需要負荷標準化です。従来では電力需要のピークに合わせて供給側の設備を調整していました(ピークカット)。これでは、余剰電力コストの発生電気料金値上げという問題が発生していました。

このような課題を解決できる可能性があるのが、VPPであり、ひいてはデマンドレスポンスです。細かくは、デマンドレスポンスには上げDRと下げDRがあり、電力需給の調整を行えるだけのオペレーションを構築できています。従来の電力需給の課題を解決できる可能性をVPPは秘めているといえるでしょう。

デマンドレスポンス:上げ下げDR

デマンドレスポンス:上げ下げDR

VPPのメリットその②新ビジネスとしての期待。36億円の取引事例

前述したネガワット取引はVPPにおいて住宅やビルにEMS設備や蓄電池設備の設置を検討するに十分なインセンティブを発揮するでしょう。デマンドレスポンスには電気料金型とインセンティブ型の報酬体系が存在します。このうち、ネガワット取引に該当するのはインセンティブ型で、下げDR時に発動します。

もちろん、アグリゲーターを介在するという点から煩雑さはありますが、2016年秋に一般送配電事業者(10社)が公募による調整力の調達を行った際に東京電力パワーグリッドを中心に電力大手4社がこれを総額36億円で落札したのです。このことを考えると、市場が本格化する以前でも市場規模の大きさを感じさせます。

これからネガワット取引は本格化していきますし、ネガワット取引にはだれでも参入できる仕組みとなっています。

ですので、今後の市場性を考慮してもビジネス的な観点からみて市場規模の成長性を感じさせますし、実際に富士経済研究所によるとネガワット取引市場は2030年に100億円規模になるとの見込みも報告されています。その根拠としては、2020年の発送電分離、2022年予定の将来の予備力を確保するための供給力(kW)を取引する容量市場の創設が挙げられます。電力の安全性・品質が損なわれるデメリットをはらんでいる可能性もありますが。

VPPメリットその③防災機能を有し、再エネ普及につながる

VPPはもちろんのことながら分散型エネルギー資源を軸にネットワークを構築しています。日本は災害大国と呼称されるように重大なリスクです。災害リスクを最小限に抑える機能をVPPは有しており、それは、分散型エネルギー資源により停電などの副次的リスクは低減されるでしょう。

さらに、日本は2030年までに再生可能エネルギー発電設備による発電を主力電源とすることを目指しています。現段階では第5次エネルギー基本計画にあるようにエネルギー・ミックスに関しても道半ばとしています。

再生可能エネルギーを主力発電とするには民間企業による企業活動が欠かせません。VPPには再生可能エネルギー設備の設置は欠かせませんが、経済産業省を中心として補助金支援制度もZEB等で導入されています。ですので、再生可能エネルギー設備の普及促進にもつながりうるでしょう。

VPPにはデメリット・課題はないのか?

物事にはなにかにつけてメリットとデメリットが存在するものです。VPPも良いことだらけではありません。VPPの普及が経済的格差を助長させる可能性もあるのです。未だ日本では国内事例が少ないためにVPPのありうる課題を一つ紹介します。

VPPの課題①デススパイラルに陥る可能性

デススパイラルの課題は、分散型エネルギー資源が普及したことを前提として発生する課題です。分散型エネルギー資源が拡大すると送電網の利用は減ります。そうすると、分散型エネルギー資源を保有しない住宅、ビル等は負担が増えることになります。

そうなると、分散型エネルギー資源非保有者は、それを手にしようとしますが、資金によっては導入が難しい場合があります。ですので、より一層の負担が発生してしまう可能性を秘めています。つまりは経済的不公平の発生が課題として挙がってきます。

こうしたデススパイラルの問題は米国でも報告されており、分散型エネルギー資源を前提にしているVPPの推進がされればされるほどデススパイラルの陥る可能性を秘めている。日本ではまだVPP導入事が少ないので、デススパイラルの問題がどうなるのかについては不透明である。

課題②電力の安全性・品質はどうなるかがわからない

日本はものづくり大国といわれてきました。ものづくりにより経済成長を果たしたといって過言ではないでしょう。そうした産業全体を支え続けたのが東京電力をはじめとする電力会社でした。電力会社の作る電力は安全かつ、高品質な電力です。しかし2020年には発送電分離もなされ、電力は自由市場となります。もちろんこれにはメリットがありますが、デメリットもあります。

それは電力を作り出す会社の倒産や、PPSと契約している家庭、事業所は電力供給を受けられなくなる可能性もあります。企業再生法による適用がなされることがあるかもしれませんが、停電のリスクもあるということを覚えておく必要があるのではないでしょうか。

まとめ

今回VPPの定義、仕組み、メリット、デメリットについてを紹介してきましたが、やはりまだ国内事例が少ないためにその是非について、今後の展開がどうなっていくのかについては時を待たないといけないかもしれません。VPPは実現すればエネルギー需給の切り札ともいえる施策です。