蓄電池とは?一次電池と二次電池の違い。蓄電池の仕組み
一次電池と二次電池の違い、蓄電池はどっち?
まず蓄電池には「電池」という言葉がついています。この電池というのは化学エネルギーを電気エネルギーに変換して電源とするような装置のことを「電池」といいます。
この電池の仕組みをまず理解しておくことが「蓄電池設備」の仕組みを理解する上で重要になります。まずは、一次電池と二次電池の違いについて押さえておきましょう。
一次、二次という言葉は他にもいろいろあるのですが、一次電圧や二次電圧、など電気に関する様々な一次、二次に関しては☞「一次電圧、二次電圧ってなに?」
一次電池とは
放電すると電池内の物質が消耗して取り出せなくなくなる電池のことを一次電池と言います。簡単に言うと使い切りの電池です。どんな電池があるかというと、乾電池や水銀電池などがあるのです。
一次電池がどのような構造になっているのかというと、☟のようになっています。ここで生じる化学反応は元の状態に戻ることのない「非可逆的反応」です。
二次電池とは
放電して化学変化した電池に外部から電気エネルギーを与えて繰り返し電気エネルギーを抽出できる電池のことを二次電池と呼びます。繰り返し使えることに二次電池の特徴はあります。蓄電池はまさにこの二次電池のことを指すのです。鉛蓄電池や、アルカリ蓄電池などの電池が蓄電池として含まれます。
二次電池がどのような構造、仕組みになっているかというと、☟のようになります。ここで生じる化学反応は、放電⇒充電⇒放電というサイクルが可能な「可逆的化学反応」です。
次にこの蓄電池(二次電池)設備の中でも鉛蓄電池とアルカリ蓄電池に絞ってその内部的な化学反応、用途などを紹介していきます。
鉛蓄電池とは?
鉛蓄電池とは鉛Pb板と酸化鉛PbO2を希H2SO4に浸けて作られる電池なのです。*高校の化学の授業でもこの鉛電池の仕組みや計算問題は頻出です。危険物乙試験にもこの手の問題はしばしば出題されます。
鉛蓄電池の仕組み(化学反応)
鉛蓄電池は正極が二酸化鉛(PbO₂)、負極が鉛(Pb)、電解液が希硫酸(H₂SO₄)で構成されています。化学反応式は放電時の負極と正極でそれぞれ異なっています。全体の構造は以下の用に放電と充電を繰り返して蓄電する仕組みになっているのです。
放電時(負極)の化学反応式
ここでいうような「負極」というのは、先に溶け出して自身がイオンとなることで電子(e⁻)を放出する金属板のことを指します。放出時の負極の流れは以下のように化学反応式で表せます。
H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻
Pb + SO₄²⁻ → PbSO₄ + 2e⁻
この二つの化学反応式をまとめると、
Pb + H₂SO₄ → PbSO₄ + 2H⁺ + 2e⁻
となります。放電時には負極で鉛が硫酸イオン(SO₄₋₂)と反応し、硫酸鉛と電子が生成されているのです。この化学反応式からPbSO₄生成までの負極での仕組みを図解すると以下のようになります。
次に鉛蓄電池の正極での仕組みについてを紹介します。
放電時の正極での化学反応式
ここでいうような「正極」というのは負極から流れてきた電子(e⁻)を受け取るような金属板のことを指します。
PbO₂ + 2H₂O → Pb⁴⁺ + 4OH⁻
Pb₄⁺ + 2e⁻ → Pb²⁺
H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻
Pb²⁺ + SO₄²- → PbSO₄
4OH⁻ + 4H⁺ → 4H₂O
この化学反応式をまとめると、以下のように導けます
PbO₂ + H₂SO₄ + 2H⁺ + 2e⁻ → PbSO₄ + 2H₂O
正極では、放電時に二酸化鉛と硫酸イオンが電子を受け取り、硫酸鉛と水が生成されているのです。この正極での放電時の流れを図解すると以下のようになります。
全体の化学反応式
負極と正極の化学反応式を合わせると以下のようになります。
Pb + PbO₂ + 2H₂SO₄ ⇔ 2PbSO₄ + 2H₂O
この反応式からわかることは正極時と負極時で電解液の比重が変化していることです。「放電」は電子を負極から正極に流して電流を発生させることを指しますが、この逆に電子を流すことが充電なのです。
鉛蓄電池の用途
鉛蓄電池の起電力は単電池(1セル)あたり2Vとされています。例えば非常用電源や、自動車の始動用蓄電池として使用されています。カーバッテリー(鉛蓄電池)では電圧2Vのセルを6個直列に接続し、12Vの電圧(起電力)を得ています。
次にもう一つの蓄電池設備(二次電池)であるアルカリ蓄電池についてを見ていきましょう。
アルカリ蓄電池とは?(二次電池)
アルカリ蓄電池というのは、電解液として水酸化ナトリウム(KOH)等の強アルカリの濃厚な水溶液を用いた電池の総称のことをさします。アルカリ蓄電池には様々な種類が存在します。
アルカリ蓄電池の種類
アルカリ蓄電池には、ニッケル・カドミウム電池(ニカド電池)、ニッケル・水素電池、リチウムイオン電池などがあります。
ニッケル・カドミウム電池(ニカド電池)とは
非常照明としてもよく使用されるのがニカド電池です。ニカド電池は正極に酸化水酸化ニッケル、負極にカドミウム、電解液に水酸化カリウム水溶液で構成されています。化学式は以下のようになります。
2NiOOH + Cd + 2H₂O ⇔ 2Ni(OH)₂ + Cd(OH)₂
ニッケル・水素電池とは
人工衛星や宇宙探査機のエネルギー貯蔵装置として使用されることのあるのが「ニッケル・水素電池」です。正極に水酸化ニッケル等、負極に水素または水素化合物、電解液に濃水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液を構成要素としている二次電池の一種です。
どのような化学式かというと、以下のようになります。MH=金属水素化物、M=水素吸蔵合金
NiOOH + MH ⇔ Ni(OH)₂ + M
リチウムイオン電池とは
住宅用火災報知器、携帯電話、電気自動車など幅広く使用されているのが「リチウムイオン電池」です。正極にリチウム遷移金属複合酸化物、負極に炭素材料、電解液に有機溶媒などの非水電解質を構成要素としています。
リチウムイオン電池は正極と負極の間をリチウムイオンが移動しているのです。
化学式は以下のようになります。
Li(1-x)CoO₂ + LixC ⇔ LiCoO₂ + C
次にこれらの蓄電池(二次電池)が建築物の中でいったいどのように蓄電池設備として使用されているのかについてを見ていきましょう。
以上の蓄電池の種類をまとめると、以下のようになります。
名称 | 正極 | 負極 | 電解液 | 化学式 |
---|---|---|---|---|
ニカド電池 | 酸化水酸化ニッケル | カドミウム | 水酸化カリウム水溶液 | 2NiOOH + Cd + 2H₂O ⇔ 2Ni(OH)₂ + Cd(OH)₂ |
ニッケル・水素電池 | 水酸化ニッケル | 水素・水素化合物 | 濃水酸化カリウム水溶液などのアルカリ溶液 | NiOOH + MH ⇔ Ni(OH)₂ + M |
リチウムイオン電池 | リチウム遷移金属複合酸化物 | 炭素材料 | 有機溶媒などの非水電解質 | Li(1-x)CoO₂ + LixC ⇔ LiCoO₂ + C |
まとめ
以上のように蓄電池についてを紹介してきましたが、この蓄電池、非常に多くの種類があり、その分いろいろな使われ方をされています。
家庭用の蓄電池だけでなく、ビルや病院、学校などの建築物にも蓄電池は使用され、効率的かつ安定的な電力供給に貢献しています。例えば、ニカド電池が非常口の誘導灯、自動火災報知機に使用されています。
このように、蓄電池は近年の再生可能エネルギー分野でも注目を浴びていたり、日常で見かける設備にも蓄電池は使用されています。非常に需要の高い電池であるといえるでしょう。