ビルメンテナンス業従事者なら「ビルメン上位資格」という言葉を聞いたことはあるでしょう。ビルメン上位資格セットをとると一般的には資格手当が高額で、企業からの待遇もよく年収アップにつながるとされています。
その情報は本当に正しいのでしょうか?実際にインターネット上に公開されている上位資格の求人情報から年収について調査してみました。
その前にまずは上位資格と呼ばれる資格は何を指すのかを解説します。
ビルメン三種の神器・上位資格とは?
まず、ビルメンテナンス業界においてよく必要とされる資格群であるビルメン4点セットについてみましょう。
ビルメン四点セット
もちろんビルメンテナンスは無資格、未経験でも就業可能ですが、ビルメン4点セットは必須と呼ばれることもあります。
上位資格はこのビルメン4点セットよりさらに難易度が高く企業からの引き合いの強い発展形の資格群になります。
ビルメン上位資格の3種の神器
ビルメン上位資格とは、以下の資格になります。
エネルギー管理士、ビル管理士(正式名称は建築物衛生管理技術者)、電験3種(正式名称は第三種電気主任技術者)の三つがビルメン上位資格やビルメン三種の神器と呼ばれる資格群です。
それぞれについてどんな資格なのか?合格率はどのくらいなのかについてみていきましょう。
エネルギー管理士
資格概要
エネルギーの使用の合理化等に関する法律(通称:省エネ法)により規定量以上のエネルギーを使用する工場(病院や学校などある)にはエネルギー管理者を置く必要があります。これらの施設にて省エネを推進する役割を持っているのがエネルギー管理士です。
詳しくは☞「3分でわかる!エネルギー管理士」、エネルギー管理士の年収や需要については☞「エネルギー管理士の年収はおいくら万円?」、エネルギー管理士の資格の合格率については☞「エネルギー管理士の合格率は低いのか?」
職務内容
エネルギー管理者は、エネルギーの使用の合理化に関して、エネルギーを消費する設備の維持、エネルギーの使用の方法の改善及び監視、その他経済産業省令で定める業務の管理を行う資格なのです。(省エネ法第11条)。
ビル内のエネルギー(熱と電力)について省エネの観点から管理します。なので、エネ管はビルメンテナンスにとって必要不可欠とも言える資格なのです。
資格取得方法
エネ管の資格を取得するには2つの手法があります。1つは試験による取得、もう一つは研修による取得です。
試験 | 研修 | |
実務経験 | 1年以上 | 3年以上 |
科目 | 電気分野、熱分野 |
電気分野、熱分野
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合格者数推移、合格率
エネ管試験の傾向として前年の合格者数が相対的にみて多いときは次年度試験の難易度が上がるようです。毎年約3000人の人がエネルギー管理士に合格しています。
なぜ重要か❓
省エネ法で記載されているとおりの業務はビル管理において重要な位置を占めています。特に省エネ化が叫ばれている世の中ですからエネ管には重要な責務があります。それゆえに企業側からの引き合いが強いのです。
ビル管
資格概要
建築物の環境衛生の維持管理に関する監督などを行う国家資格で、正式名称は建築物環境衛生管理技術者と呼びます。
建築物衛生法によると面積3000m²以上(学校については8000m²以上)の特定建築物において選任義務があります。面積3000m²の建物とは商業施設や百貨店など幅広いです。面積8000m²以上では大学などを含む学校のことを指します。なお、老人ホームなどは「特殊な環境」にあたると判定され管理対象にはなっていません。
詳しくは☞「3分でわかる!ビル管理士」、「ビル管理士の合格率について」
職務内容
維持管理業務の計画立案☞維持管理業務を実施☞測定・検査の実施とその評価☞是正措置
と法律で指定された特定建築物についての環境衛生管理業務の上流工程から下流工程までを行います。非常に幅広い職務内容ですが、その分やりがいの感じる資格職であるといえるでしょう。
具体的には空調調和設備管理や給水設備の管理を行います。
資格取得方法
大まかに「学歴」による取得と、「免許」による取得方法があります。詳しく☞「3分でわかる!ビル管理士」を参照
合格者数、合格率
ビル管試験もエネ管試験と同様に前年度試験の合格者数が相対的に高い場合次年度の難易度は上がっている傾向にあるようです。非常に合格率の低い難関試験といえるでしょ。
なぜ重要か❓
ビルメンテナンスにおいて衛生管理業務や設備管理など、統括的なビル管理者の存在は、住人やテナントの快適な生活環境を提供するという点で非常に重要な役割になります。
この資格は環境衛生管理計画などの策定から実行、評価までを一機貫通して行うという点で多くの人と関わるためのコミュニケーション能力が求められる資格職であるといえます。
電験3種(第三種電気主任技術者)
資格概要
電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の工事、維持及び運用の保安の監督を行うことができる資格です。詳しくは☞「3分でわかる!電験3種」
職務内容
主に電気工作物の運用と保守管理業務を行います。ビルメンテナンスでは、作業員の統括的なマネジメントを行うこともあります。
資格取得方法
- 試験による資格取得希望者
- 科目合格者(前年度及び前前年度の試験で一部の科目に合格した人。*試験申し込み時にその旨を記載する)
- 新規受験者(資格制限はなく、まっさらな気持ちで受験)
- 学歴と実務経験による資格取得希望者
の二つの取得方法があります。学歴や実務経験による認定取得については☞「電気主任技術者の認定取得について」
合格者数
こちらは、科目合格なしの場合の電験3種の合格率なのですが、いずれの年度も合格率が10%を切る難関な資格となっています。
なぜ重要か❓
一般的な認識として電験資格は社会的地位が高いとされている資格です。合格率も低く、難易度が高い資格であるからでしょう。また、電気工作物の運用、保守業務を行う特性上、ビルメンテナンス業界からの引き合いも相当に強いと考えられます。
ビルメンテナンス上位資格の合格率まとめ
以上のビルメンテナンス上位資格の合格率と、関連して取得される消防設備士乙4や第2種電気工事士を含めた資格合格率ランキングは以下のようになります。(*平均合格率で算出)
ビルメン上位資格・三種の神器は本当に優遇されるのか?
先ほども少し触れましたが、ビルメン上位資格をとると年収などの待遇面が上がるとされています。
加えて資格手当も厚く(月2万の資格手当発生など)、上位資格を取得するとキャリアアップにつながる可能性があるとされます。
果たして、本当にビルメン上位資格はいい年収がもらえるのか?ということを、インターネット上に公開された求人情報を元に上位資格を保持した人への年収オファーを調査してみました。
上位資格のうちどれかを保持した人材を応募要件としている求人情報を元に年収帯の分布をヒストグラムで図示したものが以下になります。
ビルメン三種の神器・上位資格保持者への年収提示分布
ビルメン上位資格保持者への求人情報全80件のうちもっとも多かった求人情報として年収550万円がうち20件と最多でした。
求人情報の中には年収提示800万を最大として提示する求人情報もあり、ビルメン上位資格は年収アップにつながっているというのは事実としてありえそうです。
どんな資格を求めているか?
上で年収分布をみましたが、求人情報のうちビルメン上位資格のうち1つでも持っている人への求人を調査しました。
次に、どんな資格を持った人を550万円帯で求めていたのかを調査します。
以下の図は縦軸がスコア、横軸が出現頻度となります。
スコアは、求人情報のうち特定の単語(=資格名)がどれほど特徴的であったかをスコア化したものです。
出現頻度は、求人情報の中で特定の単語がどのくらい出現したかを頻度で表しています。
この図からわかるように年収550万円帯の求人情報では電験3種は最も求められているようでした。
ビルメンテナンス業を営む会社からも「電気主任技術者が足りない!」という声は聴くことがあります。何種が足りないのかというと、ビルメンテナンスでは特に3種が求められているようです。高圧を扱う場合は話が別かもしれませんが。
上位資格だけ持っていてもダメ?
危険物乙種4類の資格を保持していることも条件としている求人情報や設備管理経験5年などの経験年数をとうような求人情報もありましたので、ビルメン上位資格だけを保持して就職できるかというとそうでもないようです。
特に、ボイラー技士も併せてスコアと頻度が高かったため、「ビルメン4点セットの一部」+「ビルメン上位資格の一部」を取得することが年収550万円帯の求人情報で応募する際の必須ではないもののあるとよい資格になるようです。
また、ビル管理士資格は、複数資格を保持しているという人材を募集しているというよりかはビル管理士資格保持者単体で求人オファーを出していることがあるようです。
まとめ:結論
- ビルメン上位資格は年収upにつながるか?
- つながるといえる。ただし、前提としてビルメン4点セットを取一つ以上有していること
- ビルメン上位資格をとればどのくらいの年収がもらえそうか?
- 最も多い求人情報で年収550万円!年収800万円の事例もある!