日々の生活や産業に欠かせない電力について、今後どのように供給していくのかという問題に関して、「エネルギーミックス」への関心が高まっています。 では、「エネルギーミックス」とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?本稿では、「エネルギーミックス」とは何か、その必要性や将来の見通しなどについて解説します。

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エネルギーミックスとは?

エネルギーミックスとは複数の電源の組み合わせ

発電方法には火力発電や原子力発電、水力発電など様々な手法がありますが、一つの発電方法だけで電力を賄っていると、その電源が利用できなくなった場合深刻な電力不足に陥ってしまいます。
また、それぞれの電源にメリットやデメリットがあるため、それらの特性をきちんと理解して活用することが重要です。

不測の事態に電力不足に陥ることを防ぐため、一つの発電方法に依存せずに様々な電源を電力の供給源とすることを、「エネルギーミックス」と呼びます。いかなる時にも電気を安定して供給することがエネルギーミックスの目的です。

なぜエネルギーミックスが必要なのか?

エネルギーミックスは、地球環境を守りつつ、安定したコストでのエネルギーの供給を維持する上で重要な指標とされるものです。
2011年3月に起きた東日本大震災以降、日本では原子力発電の安全性への懸念から、原子力発電所の運転が停止されました。その結果、電力供給を火力発電に依存するようになり、電源構成に大きな変化がもたらされたのです。

特に火力発電の電力供給の多くを依存することは、二酸化炭素の排出量が増加するという面で環境問題にも繋がります。
また、火力発電に使われる石油などの燃料は、産出国の影響を大きく受けるため、常に調達リスクが伴うものです。このような問題からも、火力発電に電源比率の多くを依存している状態が続くことはあまり望ましくないと言えるでしょう。

安定したエネルギーミックスの策定は、国内のエネルギー供給の安定だけでなく、国内外の情勢や環境問題への対応にも繋がるのです。
ゆえに、政府としても長い目で見たエネルギー基本計画を考案し、より適切なエネルギーミックスの実現を目指しています。

現在のエネルギーミックスの姿

2014までの電源構成

1973年の石油危機以降、従来の石油主導の電源構成から徐々に石炭やLNG(液化天然ガス)、原子力が主要電源として電源比率を拡大してきました。2000年頃には、中でも原子力が全体の3割を超える電源比率を占めています。

しかし、2011年の東日本大震災での原発事故をきっかけに原子力発電所が全面的に稼働を停止されました。原子力発電で賄えなくなった電力を供給するため、火力発電の電源構成比率が増加し、電源構成全体に大きな変化が訪れます。
2014年時点では、原子力の電源比率がついに0%となり、LNG、石炭、石油の占める割合が全体の8割を超える状態となりました。
(経済産業省資源エネルギー庁 エネルギー白書より)

現在のエネルギーミックス:電源構成

2016年時点でも、安全性への懸念から原子力発電所の再稼働は進んでおらず、原子力の占める電源構成比率は2%以下となっています。その分の電力供給を担っている電源はやはりLNGや石炭であり、依然として火力発電の占める電源構成比率は高いままです。

火力に代わる電源として、再生可能エネルギーも注目を集めています。再生可能エネルギーとは、地熱や風力、太陽光など、自然界に常に存在するエネルギーを指します。
新たな電源として開発も進められていますが、2016年度時点では水力発電を除いた再生可能エネルギーの電源構成比率は全体の6%程度にとどまっています。

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エネルギー基本計画に見る2030年のエネルギーミックスの姿

再エネ比率が22%~24%

2030年に向けて、再生可能エネルギーを主力電源として活用することを目指した取り組みがなされています。
太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーは、発電コストが低下していることから、電源として各国で導入され始めています。

日本においても電源構成を再構築しなければならない段階において、再生可能エネルギーの有用性が注目を集めています。
特に、2030年に向けて再生可能エネルギーを主力電源に据えるため、送電設備の整備や自然環境に左右される出力変動の調整などへの取り組みが進められる見通しです。

原発の比率20~22%と、高いとの批判もある

一方、政府が決定したエネルギー基本計画においては、原子力も重要な電源と位置付けられています。その考えに基づき、2030年時点で原子力発電の電源比率を20~22%に高めるという方針も打ち出されています。

原子力発電の依存度を高めることには、火力発電の電源比率を縮小し、二酸化炭素排出量を削減するという狙いもあります。
しかしながら、原発に過大に電源供給を頼ることで万一福島原発事故のような大事故が再度発生した場合、結果的には二酸化炭素の増加に逆に拍車をかけるということにもなりかねません。

更に、原発比率の目標値については専門家の中にも非現実的と評価する声があります。原発炉等規制法を遵守した上ですべての原発を稼働させたとしても、原子力発電比率は20%に満たないという計算結果も出ているのです。

原発炉等規制法では、原発寿命は「原則40年」と定められていますが、20~22%という目標値の達成のためには、40年を超えて稼働することが必要と考えられています。場合によっては、同法で例外的に可能性が認められている「60年運転」が必要になるとの意見もあり、批判の声が上がっていることも事実です。

エネルギー基本計画にみる2050年のエネルギーミックスの姿

低炭素社会の実現に向けた電源構成を目指す

日本は、2050年時点で温室効果ガスを80%削減することを目標として掲げました。目標達成のために脱炭素化を進めるにあたって、政府は「第5次エネルギー基本計画」にてエネルギー転換に向けて各電源の方向性を定めています。

再生可能エネルギーについては、今後電源構成比率を高めていくことが期待されています。そのために、設備の整備や出力変動の調整手段を整え、経済的に実用性を高めることで、主力電源化を目指す方針が示されました。

原子力発電については、現状では安全性に対する社会的信頼の回復が第一です。更にその後の方向性としては、経済性、機動性を担保するための技術開発を進めるとされています。
また、エネルギー転換期においても主力エネルギー源として頼らざるを得ないのがやはり石油や石炭などの化石燃料です。これらの資源に関しては、資源外交を強化する一方で二酸化炭素排出量を高める火力発電を縮小する方針が示されています。

上記以外にも、脱炭素化に貢献する蓄電池や分散型エネルギーシステムの構築、開発にも言及がなされています。低炭素社会に向け、エネルギー転換政策に加え、新しい技術の導入を推進するなど、総合的な取り組みが進められる見通しです。

まとめ

日本の電源構成は、それぞれの電源の利点を生かしつつ、よりバランスが良く安定した状態への改善が必要な段階にあります。しかし、日本

国内のエネルギー事情だけではなく、国外情勢や環境問題への配慮も重要な観点です。あらゆる観点においてリスクが少なく、長い期間の安定供給が期待できるエネルギーミックスの策定が求められています。

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