半導体デバイスにおいて、多種多様なパワースイッチング用の半導体デバイスがあります。その特性を左右するパワーデバイスの基本的特性に違いがあります。最近では、エネルギーの有効活用が求められてきていますが、その期待に応えるように、SiC(シリコン・カーバイド)といったパワーデバイスが登場しています。

この記事では、パワーデバイスとはなんのか、用途や特性、種類についてを紹介します。


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    パワーデバイス(パワー半導体)とは?構造

    パワーデバイスとは?パワーデバイスの特徴

    まず、パワーデバイスとは半導体素子で、用途としてインバータやコンバータなどの電力変換器に用いられています。パワーデバイスはしばしば、パワー半導体やパワー素子、電力用半導体素子とも称されることがあります。つまり、パワーデバイスとは電気エネルギーの制御や供給に用いられる半導体素子のことを指すのです。

    パワーデバイスの動作原理はマイコンやICと同様ですが、ICと比較して高耐圧、高電流を制御することが可能です。パワーデバイスの特徴としては①電流容量が大きいこと、②耐電圧が大きいこと、③発熱が少なく放熱が良いことなどが挙げられます。

    パワーデバイス(パワー半導体)の仕組み・構造

    以上のような役割と特徴を持っているのがパワーデバイス(パワー半導体)ですが、パワーデバイス(パワー半導体)とは一体どのような仕組み・構造となっているのでしょか。概念的にはパワーデバイスの仕組みは以下の図のようになります。

    パワーデバイス(パワー半導体)は、直流-交流のインバータ、交流-直流のコンバータ、直流-直流の直流チョッパ、交流-交流の周波数変換のそれぞれを制御する仕組みを持っています。もちろん、電力変換時に伴うエネルギー損失が少ない方が望ましく、変換効率100%がパワーデバイスの理想ではあります。言い換えると、スイッチオフ時の漏れ電流が0で、スイッチオン時の電圧降下が0となるような性能を持つパワーデバイスです。その理想に向けて今日もパワーデバイスの研究開発が盛んに行われています。

    そんなパワーデバイスはパワーエレクトロニクスの中核をなすとされることがあるほどに重要です。それゆえに、パワーデバイスの特性についてを深堀し、パワーデバイスとはどのような基本的特性を有しているのかを紹介します。

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      パワーデバイス(パワー半導体)の特性

      制御方式|パワーデバイスとは

      パワーデバイスにおいて、制御方式は電圧制御か電流制御かのどちらかになりそうですが、ゲートドライブ電力とダート回路が違ってきます。パワーデバイスの制御方式としては一般的には電圧制御を用いることが多いようです。

      定格電圧と定格電流

      デバイスの適用可能範囲は、その製造可能な耐電圧と許容電流により決定されますが、適用範囲内においては、その他の性能を検討することがパワーデバイスにおいて重要となってきます。

      ターンオフ時間

      ターンオフ時間とターンオン時間と密接な関連があり、オフ時間が短いのであれば、相対的にオン時間も短くなります。なので、オフ時間でのデバイス比較が標準とされています。オフ時間はデバイスの適用周波数を決める重要な要素でるばかりではなく、オンオフ損失の大きな目安にもなっています。オンオフ時において、端子電圧と電流が共に非飽和領域を通過し、中間的な値をとることになるので、その間における素子のスイッチング損知るは著しく低下します。このこともパワーデバイスの特性の一つです。

      順電圧降下

      デバイスの熱損失を決める要素の一つにスイッチング損失があります。それだけでなく、順電圧降下による損失として伝道損が発生することがあります。

      損失によるデバイスの温度上昇とその熱の放散の問題はデバイスの応用における基本的な重要問題という位置づけがされます。このこともまた、パワーデバイスの特性の一つといえますが、この点は多くの努力によって対応が図られています。

      回復特性

      スイッチングデバイスがオン状態からオフ状態への移行の過程のことを回復特性といいます。その場合、デバイス自身の性質のものと、回路と複合した性格のものがあります。前者のデバイス自身の性質の例としては、GTOサイリスタはデバイス電圧を野放しにしてしまうと、デバイスは破壊されてしまう可能性があります。

      それゆえに、必ず、スパナコンデンサを並列に接続し、そのスパイク電圧を吸収する必要があるのです。

      一方、回路と複合した性格を持つデバイスの例としては、ダイオードの逆方向回復過程において、漂遊インダクタンスによってスパイク電圧が発生します。一般的に電源電圧の2倍程度の電圧オーバーシュートは容認するのが普通ですが、それを超える値になる場合においては、スナバ回路によって過電圧の発生を防ぐことが必要となります。

      SOA(Safety Operation Area)

      SOAとは、安全動作領域のことを意味し、パワーデバイスにおいて重要な確認事項となります。動作中にSOA外の条件になってしまった場合、破壊する可能性があるので注意が必要です。


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        パワーデバイスの種類

        パワーデバイスにはいくつか種類があり、形式によって分類することができます。パイボーラ形式やユニポーラ形式、複合形式という分類で以下のようにパワーデバイスの種類と制御方式、定格電圧・電流などをまとめました。基本的にパワーデバイスのスイッチデバイスは耐圧、電流、スイッチング特性、ON抵抗の4つの要素で構成されています。

        形式名称制御方式定格電圧定格電流ターンオフ時間順電圧降下その他特徴
        バイポーラpnダイオード電流~6000~17007~8~3
        トランジスタ~1200~309~1.5
        サイリスタ~12000~1500数百2.7~3非自己転流
        GTO~6000~600010~301.3~6スナバ
        GCT~6000~60001~~4スナバ不要
        ユニポーラショットキーバリアダイオード電圧~100~100数ns
        MOSFET~900~14数十ns~10
        複合IGBT電圧~3300~1200~3.54
        TIGBT~1200~600~1.41.8

        一例としてパワーデバイス各種類の機能と特徴は以下のようになります。

        バイポーラデバイス複合デバイスユニポーラデバイス
        電流制御
        順ドロップ小
        ターンオフ時間大
        電圧制御
        順ドロップ中
        ターンオフ時間中
        電圧制御
        順ドロップ大
        ターンオフ時間小
        トランジスタIGBTMOSFET
        サイリスタ該当なし該当なし
        PNダイオード該当なしショットキーバリアダイオード

        バイポーラデバイス(バイポーラトランジスタ)

        バイポーラデバイスは正と負の両極のキャリアを持つので、バイポーラと名付けられたパワーデバイスです。バイポーラデバイスの特徴としては、小規模のベース電流に対して数十のから数百倍のコレクタ電流が流れる性質を用いた増幅作用にあります。

        ユニポーラデバイス

        ユニポーラデバイスは電界効果トランジスタとも呼ばれるパワーデバイスです。ユニポーラデバイスは電圧入力によって生じる電界によって電流を制御するトランジスタです。ゲートに電界を発生させ、ソースとドレイン間を流れる電子の流れを任意にせき止めることで電流を制御します。

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          パワーデバイスの用途・使用方法

          パワーデバイスを実際に適用する際には色々な技術を活用することになりますが、この記事ではゲートドライブ、デバイスの放熱、異常電圧対策、異常電流対策についてを紹介します。

          ゲートドライブ

          まず、スイッチングデバイスのオンオフを制御するには、ゲートに信号を与える必要があるのです。デバイスの種類によっては、与えるゲート信号は変わってきます。

          バイポーラデバイスの場合だと、電流制御形ゲートなので、電流信号を流すためには一般的に大きなゲートドライブ電力が必要になります。

          変換装置は多くのデバイスで構成されており、異なった電位レベルで位置しています。それぞれのデバイスに独立な電源によるドライブユニットを設置し、それぞれに制御信号を送る必要があります。ですので、デバイスが多くなると、実務上の大きな部分をデバイスで占めることになります。

          それゆえ、なるべく小さい電力で済むようなデバイスが好まれることになります。ユニポーラデバイスはゲートドライブ電力が小さいので、非常に普及していきました。IGBTのゲートドライブは以下のようになります。

          ゲート信号部分には、一般的にホトカプラをIC化した光絶縁増幅器を用いることになります。IGBTは電圧制御デバイスで動作が速く、ホトカプラの高速応答性能だけでなく、コモンモードのノイズ除去が重要になってきます。

          デバイスの放熱

          パワーデバイスの厚さは数mmのウエハに数十A/cm²の電流を流します。順電圧降下が1V程度だったとしても、1cm²当たりの数十W以上の発熱があります。デバイスの放熱設計は装置設計上の重要な要素になっています。

          中小量のものだと、放熱用のヒートシンクに熱抵抗が少ないようにデバイスを取付て、そのシンクを自然空冷か強制空冷します。高圧大電流のものは、高圧の危険性とデバイスの発熱も大きくなってきます。ですので、純水によって間接空冷が主流となってきます。

          異常電圧対策

          基本的に、スイッチング時に発生する以上電圧に対策を講じる必要があります。異常電圧は、配線の漂遊インダクタンスの電流を遮断するときに発生します。パワースイッチング回路設計の基本は、いかにして配線の漂遊インダクタンスの最小化ができるかどうかが非常に重要になってきます。その際はスナバ回路を用いて異常電圧の吸収を図ります。

          異常電流対策

          IPMの出現によってIGBTにおいてこのことはあまり問題ではないのですが、パワートランジスタやサイリスタでは異常電流が問題となることがあります。サイリスタに関しては電流遮断能力は有していないので、基本的にはヒューズによる保護方法を取ります。事故対策としての意味合いがあります。

          トランジスタのような自己遮断能力のあるものは、ゲートドライブの高速遮断能力により保護が可能になるような場合もあります。その時、自己電流の素早い検出等周辺技術によるサポートが必要になることがあります。

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            まとめ

            以上のように、パワーエレクトロニクスで重要になるパワーデバイスの仕組みや種類についてを紹介してきました。パワーデバイス、パワー半導体は技術革新が比較的早く、研究開発も国内問わずに盛んになっています。今後、パワーデバイスがどのような変遷をしていくのかも注目です。