電気工事にはいくつかの種類がありますが、その中の一つに「がいし引き工事」という施工方法の電気工事があります。電気工事士の試験でも出題されることがある「がいし引き工事」とはどんな工事なのか?その施工方法やメリット、重要となるバインド線について迫ります。
がいし引き工事とは?
がいし引き工事は古くから存在する施工方法で、今となってはそれほど電気工事においてつかわれることがなくなった電気工事の施工方法です。今では電気設備技術基準により、レトロなお店などでしか見られなくなっています。でがいし引き工事とは、がいしを造営材に取り付け、絶縁電線をがいしで支持(バインド、バインド線)し、造営材から離隔する配線工事方法のことを指します。
がいしとは絶縁性にすぐれた器具
ちなみに、「がいし」とは☟の黄色い部分で、電線とその支持物との間を絶縁するために使用する器具のことを指します。
一般的にがいしは電気絶縁性能に優れたおり、電柱や鉄塔などに使用される電力用、電信用のものを指すことが多いです。
バインド線は、造営材を括り付けるための線
バインド線とは、電線を造営材に括り付けることを目的とした金属の線のことを指します。鉄製のものや、アルミ製のものなどいくつか種類があります。ちなみに電気工事士の実技試験では、正しいバインド線の使用をしないと減点になることもあるので、十分練習しましょう。
がいし引き工事の注意点
がいし引き配線を用いますが、がいし引き配線は使用電圧300V以下の場合は、人が容易に触れるおそれがないようにします。300Vを超える場合に関しては人が触れるおそれがないように施工する必要性があるのです。がいし引き工事で使用する電線は、屋外用として使用されることの多い屋外用ビニール絶縁電線(OW線)、引き込み用絶縁電線(DV線)などを除いた絶縁性、難燃性、耐水性に優れたものを使用することが多いです。
がいし引き工事の施工方法にて重要な支持点間
がいし引き工事の施工では電線を離隔する工事方法でしたが、実際にどのくらいの距離の電線を離隔するのかというと、以下のような距離になっています。
使用電圧300V以下 | 使用電圧300以上超過 | |
---|---|---|
電線相互間の距離 | 6cm以上 | 6cm以上 |
電線と造営材の距離 | 2.5cm以上 | 4.5cm以上 |
電線の支持方法に関しては、電線を造営材の上面に取り付ける場合、支持点間距離を2m以下にすることとしています。
電圧によって離隔距離、支持点間が異なる
また、がいしとがいしの支持点間は300V以下のとき、2m以下とし、300V以上のときには6m以下にします。電線と造営材の距離は高さで、300V以下の時、2.5cm以上とし、300V以上の時は6m以下とします。
電線と他の線・管との空きに関しては、10cm以上の距離を離隔する必要があります。なお、使用電圧が300Vを超える電球戦に関しては屋内には施設することはできないので注意が必要です。
がいし引きした低圧屋内配線
電気設備技術基準解釈第157条にて低圧屋内配線工事におけるがいし引き工事が規定されています。低圧屋内配線の使用電圧が300V以下で、接近または交差するものとの間に絶縁性の隔壁を堅ろうに取り付けたとき、もしくは低圧屋内配線を十分な長さの難燃性及び耐水性のある堅ろうな絶縁間に収めた場合、上で示したような離隔距離の定期用はうけないこととなっています。
がいし引き工事・高圧屋内配線の場合
低圧屋内配線のみならず、高圧屋内配線でもがいし引き工事は行われます。電気設備技術基準解釈202条に屋内配線工事はがいし引き工事かケーブル工事を行うこととしています。その規定は以下のようなものになっています。
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高圧屋内配線工事において人に触れる恐れがある際に上のような規定は適用されます。
がいし引き工事のメリット
がいし引き工事は現在、新設においてはあまり用いられなくなっている施工法ですが、何と言っても電気工事士の職人芸によるがいし引き工事は美しいものがあります。レトロな雰囲気を醸し出すにはもってこいな施工法ともいえます。というのも、がいしは陶磁器ですから、がいし引き工事の中には有田焼を用いた工事もあるようです。
がいし引き工事の技術は洗練さらて職人の手によって現在もなお、用いられています。近年ではリフォーム需要の伸びによってレトロな雰囲気を醸し出したい人にとってがいし引き工事が行われることもあるようです。
まとめ
電気工事の施工法についてはいくつか種類がありますが、今回はその中でも比較的レトロながいし引き工事を紹介しました。電気工事士の試験でも出題されるがいし引き工事ですが、抑えておくこととしては支持点間の距離がどのくらいなのかということでしょう。