変電所は、電力系統全体と繋がっています。それゆえ、変電所の雷対策や絶縁設計は変電所のみで考慮するべきことではなく、電力系統全体で考慮すべきことです。電力系統を安全かつ経済的に設計する必要があるのです。その安全を乱す事象の一つとして「雷サージ」という現象があります。この記事では、そんな雷サージについて、雷サージがどのような仕組みになっているのか、雷サージを対策するにはどのようにしたらいいのかについてを紹介します。

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雷サージとは?雷サージの仕組み

雷サージとは雷の影響で発生する過渡的な異常高電圧のこと(雷大破電圧)・仕組み

雷(かみなり、らい)サージとは、雷の影響で発生する異常高電圧のことで、雷大破電圧とも呼ばれます。雷が落ちてくるときに、瞬間的にかなり高い電圧が発生します。この影響により、過大電流が流れることを雷サージといいます。そんな雷サージは3種類あります。1つは「直撃雷サージ」、1つは「誘導雷サージ」、もう1つは「逆流雷」です。

直撃雷サージとは

直撃雷サージとは、その名の通り、対象そのものに落雷することをさします。電気設備であっても、人体であっても直撃する雷が直撃雷サージです。直撃雷サージは、電気設備等対象物に保護を施したとしても落雷被害はゼロにはなりません。ですので、保護をはっても、完全に被害をゼロにすることは不可能なのが直撃雷サージの特徴です。

誘導雷サージとは

この過大電流たる雷サージの発生原理は、電磁界に通信線や電力線などがあるさいに誘導電が発生します。この誘導電によって雷サージは発生するのです。なお、誘導雷というのは、落雷の際に電線や電話線に発生する大きな電圧・電流のことです。電線などを通して雷サージは発生しますが、この時、サージ電圧は電線を通じて大地に流れようとしますが、この電流経路は接地ラインなどを流れようとしてアーク放電を放つことがあります。この誘導雷により発生する現象を誘導雷サージといいます。

逆流雷サージとは(逆フラッシュオーバ)

逆流雷とは、建物などに落雷が発生した際に、過電流が配線に流れてしまうことを逆流雷といいます。別名アースを通じて逆流してくるので、接地雷サージと呼ばれます。それゆえに落雷予測に応じた適切な接地工事をしていないと雷サージが発生してしまいます。

雷サージが発生すると、電力系統を乱すだけでなく、パソコンや家電などのケーブルを通している家電製品の破壊にもつながってしまいます。日本では、年間50万回の落雷が起きています。とかく日本では、落雷頻度を考えると、雷サージは発生しやすい現象です。雷の電圧は1億ボルトとされています。落雷には一たまりのないエネルギーが内包していることがわかります。

雷サージがの仕組み:電磁誘導サージと静電誘導サージ

雷サージの仕組み

雷サージの仕組み(出典:日動工業株式会社)

すこし、用語を整理しておくと、サージには電磁誘導サージと、静電誘導サージがあります。電磁誘導サージとは、「落雷によって雷電流が大地に流れ込み、過電流が発生します。それにより磁界が発生し、サージ電圧が配線に誘導されます。」と説明できます。

静電誘導サージは、「近隣に落雷があった場合、大気の静電界に変化が起き、雷放電によって⁻の電化が消滅し、電線内の+電荷が大地に戻るときの過電流が照明器具に印加され雷サージが発生します。

また、変電所での近接雷では、変電所に近い送電線への直撃雷や、変電所近傍の鉄塔への落雷による逆フラッシュオーバで発生します。逆フラッシュオーバの雷サージは電力系統全体に影響を与えることになります。

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雷サージの対策方法とは?

雷サージは最悪電力系統に影響を及ぼす可能性があったり、家庭のテレビ、パソコン、無線LAN、電源コンセント、分電盤などを破壊したりする現象です。しかし、万策尽きたというわけではなく、雷サージは対策することができます。

雷サージの対策:近接雷の対策→制限電圧に考慮して避雷器を設置

近接雷の雷サージは、波高値および、衝動はの時間に対する大きさで、波形の傾きを意味する「波頭しゅん度」が大きくなります。そのため避雷器による保護が主体となってきます。とはいえ、避雷器には制限電圧があります。それゆえに、変電所の機器の絶縁強度の設計は、避雷器の制限電圧を十分に考慮して行うのが望ましいとされています。

雷サージの対策:遠方雷の対策→コロナによる減衰が起こるのであまり問題ではない

遠方雷においては、雷サージが送電線路進行中に、コロナによる減衰(熱エネルギー変換)や電線の表皮効果によって、波高値・波頭しゅん度とともに低減していくので、近接層と比較して、雷サージはあまり問題となりません。

雷サージの対策:雷注意報が出たら機器をコンセントから抜く

当然、雷サージの電圧はとても大きく、仮にテレビやパソコンなどの電気機器のスイッチをOFFにしていても、効果が得られるわけではなく、電源用避雷器がない場合、電源スイッチを飛び越して雷サージが流れてくることがあります。電源用避雷器を設置していると雷サージ対策の効果が得られますが、ない場合はブレーカーをオフにしていても30%ほどの雷サージが侵入してきます。

ですので、もし雷注意報が報告された際には、電源ケーブル等をコンセントから抜く対策が望ましいとされています。これがもし、必ずしもそうとは限らないのですが、雷鳴が聞こえるようなときであればこのような回避行動は感電の危険性を伴ってしまいます。

雷サージ対策用のタップが販売してありますが、パソコンや家電機器を保護するこのタップを使えばデータ破損などの被害は防げるという効果が見込めます。

雷サージの対策:雷サージ用タップでサージプロテクト

雷サージの対策として、電源タップとも呼ばれるテーブルタップを使用することもあります。テーブルタップは電気用品安全法で特定電気用品い区分される電気製品です。雷サージにより発生する過電流をタップの内蔵ブレーカー反応で遮断するか、バリスタなどのサージ防護素子に逃して過電流から保護することができます。ただし、ブレーカーの耐性を超えていると、タップの効果は無力になってしまいます。

まとめ

以上のように、雷サージとはどんな現象なのか、雷サージの仕組みと被害、対策方法などについてを紹介してきましたが、雷サージは落雷の多い日本では発生しやすい現象です。雷サージの原理・仕組みを知り、対策方法をねることが重要です。