電気系の資格の中でも最難関の資格に君臨している資格が電験1種です。試験による電験1種の取得者は「神」とも呼ばれることのあるほどの難関試験です。
この記事では、そんな電験1種の受験資格、受験科目、合格率や試験対策方法などの資格情報をお届けします。
電験資格を2、3種に合格した人の中には電験1種の受験を考えている人もいるかもしれません。そんな方に向けて電験1種の資格情報をわかりやすく、解説します。
その前にまずは電験1種とは何のための資格なのかということを押さえておきましょう。
電験1種とは
資格 | 対象設備 | 対応可能設備 | 配置業務規定 | 有資格者数 |
電験1種 | 事業用電気工作物 | 全て | 約9,000人 | |
電験2種 | 発電所 受電設備 |
17万V未満5万V以上 | 電気事業法 | 約34,000人 |
電験3種 | 送配電線設備 |
5万V未満かつ5,000kW未満
|
約230,000人 |
電験2,3種に対応可能設備の制限があるのに対し、電験1種はそのような制限はありません。すべての事業用電気工作物を扱えるのです。
もちろん、特高太陽光発電所での保安業務も可能ですし、まさにありとあらゆる事業用電気工作物の管理・保全業務を行えるのです。
ただ、その広すぎる対応可能施設ゆえに電験1種はかなりのハードルがある資格試験です。旧試験よりも難易度は下がったとはいえ、試験による取得は相当な難易度をほこっています。
認定による取得もありますが、認定だから簡単と一言では言えず認定要件こそ軽いですが、審査が相当厳しいものとなっています。
電験1種の資格情報
電験1種を受験する前に知っておきたいこととして以下のようなものがあります。
*ここでは試験による取得の場合に限っています。
受験資格、受験料、試験会場、試験日、申込期間、出題形式
受験資格 | 新規受験者⇒制限なし 科目合格者(過去三年以内の合格科目) 一次試験免除者(前年度) |
受験料 | 郵便:14,200円 インターネット:13,800円 |
試験会場 | 全国10か所 |
試験日 | 一次試験:毎年8月中旬(令和5年度は8/19) 二次試験:毎年11月中旬(令和5年度は11/12) |
申込期間 | 毎年5月末~6月初週(令和5年度は5/15~6/1) |
出題形式 | 一次試験:マークシート方式、記述方式 二次試験:記述試験 一次試験について科目合格制度を採用 |
新規で受験する場合ですと、受験資格に制限はありません。科目合格者も一次試験免除者も同じ申込期間内に申込をします。出題形式に関しては年度により変更がある場合があります。
一次試験については科目合格制度をほかの電験資格と同様に採用しており、この制度もあってか試験会場に着くと同窓会のような気分になることもあるようです。
また、電験1種の受験者の特徴としては、受験者の年齢層が比較的高いようです。電験3種の受験者では20代の受験者が、電験2種の受験者では30代が多く、電験1種の受験者では40代が最も多いようです。経験も知識もある技術者が試験会場に集うことがこの試験のすごさを物語っているような気がします。
また、電験1種の受験者のもう一つの属性として、受験者のうち40% が受験回数3回以上ということです。何度も挑戦しなければ電験1種は取得できないように思えます。中には一発合格してしまう人もいますので、相当受験者の層に厚さがあることがうかがえます。
試験科目、科目合格基準
一次試験
いずれの科目も配点は80点になります。
科目 | 出題範囲 |
理論(90分) | 電気理論,電子理論,電気計測及び電子計測 |
電力(90分) | 発電所及び変電所の設計及び運転,送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の 設計及び運用並びに電気材料 |
機械(90分) | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、 自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理 |
法規(65分) | 電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理 |
二次試験
科目 | 出題範囲 |
電力・管理(120分) *120点満点 |
発電所及び変電所の設計及び運転,送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の 設計及び運用、電気施設管理 |
機械・制御(60分) *60点満点 |
電気機器、パワーエレクトロニクス、自動制御、メカトロニクス |
一次試験科目合格基準
電気技術者センターの各科目合格基準は100点満点換算のものです。実際の試験の満点は80点なので80点換算したものになります
年度 | 理論 | 電気 | 機械 | 法規 |
H26 | 43 | 45 | 40 | 45 |
H27 | 42 | 45 | 42 | 45 |
H28 | 48 | 48 | 45 | 48 |
H29 | 42 | 47 | 47 | 42 |
H30 | 48 | 48 | 48 | 48 |
R1 | 39 | 47 | 47 | 47 |
R2 | 48 | 48 | 48 | 48 |
R3 | 48 | 48 | 48 | 48 |
R4 | 48 | 48 | 48 | 47 |
R5 | 48 | 48 | 48 | 48 |
電験1種一次試験の各科目合格基準点 (参考: 一般財団法人 電気技術者試験センター)
合格基準としては各科目約6割をとれていれば合格可能性が高まります。
科目合格者数、合格率
電験1種科目合格者数の推移
二次試験合格基準
電験1種の二次試験の合格基準は「電力・管理」「機械・制御」両科目で約108点が合格点となっており、試験の内容が難しい年の場合は、合格点調整が行われることもあります。
電験1種の合格率
新規受験の場合の合格率は令和5年度で8.8%と高難易度の試験となっています。
ただ、ここ数年の合格率は上昇傾向にあるようです。
電験1種の最年少合格者
ちなみに電験1種の最年少合格者は、高専5年生の20歳の方です。20歳であの難易度の試験を合格してしまう天才です。。
高専3年で電験3種に合格し、2種に合格、5年で1種に合格するというとんでもない猛者ですね。
電験1種の試験対策
電験1種の試験対策として最も有効なのは過去問を解き倒すことです。電験1種に特化した参考書というのは電験2,3種に比べれば圧倒的に少なく、過去問を暗記するのではなく理解するということが最も効果的でしょう。
一次試験科目の中でも苦手とする人が多い「機械」ですが、機械は試験範囲が電力に比べれば狭く、機械の試験問題の中には電力よりの問題(H22の電気鉄道のき電方式の問題など)も出題されますので、「電力」が得意分野の方ですと、なじみのある問題や普段業務でやっている内容が出題されることがあります。
そうした問題は機械の中では少数かもしれませんが、1点の重みがあります。なので、得意科目を一つ作ることがまず大事といえます。
電験1種対策参考書
電験1種のおすすめ参考書として有名な書籍(出典)
こちらの電気書院さんが出版している電験1種模範回答集シリーズですが、この本と過去問のでみで合格した人もいます。電験1種の試験対策のてっぱん参考書といえるでしょう。
また、電験1種の参考書ではないですが、電験2種の参考書も参考になります。特に電力などは、電験2種とそれほど難易度が変わらないからです。
電験1種を取得するメリット
以上のように電験1種の資格情報をお届けしてきましたが、電験1種はやはり電気系の資格の王様です。そうやすやすと合格できるものではありません。そんな電験1種に合格したら一体どんなメリットがあるのかということを紹介します。
メリットその①:尊敬の対象
これは、電験1種を目指しているひとのみならず、世間一般的に高難易度の資格とされる電験1種を合格するということにかなりの価値があるからです。
実際に尊敬されることを目標に頑張る方はそれほど多くないのかもしれませんが、電験1種のブランドというのはある意味海外洋服ブランドのようなものがあります。とはいっても合コンやコンパで電験1種をもった大学院生がそのことを打ち明けてもあまり受けなかったりするので、電験1種ブランドは使い時を選ぶかもしれません。
メリットその②:さらなるスキルアップ
電験1種は、すべての事業用電気工作物を扱えますからその分現場の数だけ、経験も知識もついてきます。今のご時世、通信ネットワーク(少し古いかもしれません)や、再生可能エネルギー分野での電気主任技術者の保安分野での活躍は目覚ましいものがあります。
国策としても電気保安法人の長期的不足を見込んで施策をうつようですし、世間的には求めらる資格職であり続けるでしょう。
メリットその③:好待遇
就職、転職活動において電験1種持ちという人材はなかなか現れないですが、大規模データセンターや発電所での電験1種は高収入であることが多いです。年収1000万円も不可能ではないでしょう。