電気工事にはいくつか施工方法がありますが、その中の一つに金属管工事という施工方法があります。この記事では金属管工事とはどのような施工方法なのか?金属管工事はどのような場所で行うのか?などについてを紹介します。
金属管工事とは?どのような施工方法?
まさしく金属管を用いた施工方法
金属管工事とはその名の通りに「金属管」を用いて配線を行う工事です。金属管というのは電線管の一種で、金属製の電線管と、可とう電線管のうちの一種です。金属管の中にはさらに厚鋼電線管、薄鋼電線管とあります。金属管工事は厚鋼電線管と薄鋼電線管を用いて工事する施工方法になります。
金属管工事の施工方法については電気設備技術基準解釈159条に規定があります。
金属管工事の特徴
金属管工事の特徴はすべての場所に施設が可能で、ほとんどの制限を受けることなく、乾燥、湿気、水気のあるような場所でも金属管を展開、または隠ぺいしていれば施設可能な工事方法です。施設可能な場所の範囲が広いので、適用性が高い施工方法です。
使用する電線と使用の注意点
金属管工事で用いる材料には原則として「電気用品安全法の適用を受ける金属製の電線管及びボックスその他の付属品」「黄銅若しくは銅で堅ろうに製作したもの」「「防爆型附属品及び絶縁ブッシング」があり、この3原則に沿っていなければなりません。
使用する電線に関しては、屋外用ビニル絶縁(OW線)を除いた、600Vビニル絶縁電線(IV線)、600Vポリエチレン絶縁電線(IE線)、引き込み用ビニル絶縁電線(DV線)などの、ヨリ線(単線と対比で複数の銅線で曲がりに強い)を使用します。
とはいっても短小な金属管に収めるようなもの、または単線が3.2mm以下の電線であれば使用可能です。また、電線の接続に関しては必ずボックス内で行うこととなっており、金属管に接続点を設けてはいけないことになっています。
金属管工事の施工場所と施工方法
金属管工事の一般的な施設場所
先ほど金属管工事はほとんどの場所で施設可能だと述べましたが、なぜそれほど適用性の高い工事だとされているのでしょうか。それは単に金属管が電線を保護していることからほとんどの場所で施設可能ということができ、展開した場所、点検できる隠ぺい場所、点検できない隠ぺい場所のそれぞれにおいて水気があっても乾燥していても施設可能なのです。ただし、湿気、水気のある場所では防湿装置を施す必要があります。
ここで出てくる「展開した場所」というのは屋内の天上下面など配線が容易にみえる場所をさします。「点検できる隠ぺい場所」というのは点検口がある天井裏、押し入れなどの普段は隠ぺい状態にあるが、点検可能な場所を指します。「点検できない隠ぺい場所」というのは地中、壁中などの造営物を壊さないと点検できないような場所のことを指します。
金属管工事の特殊な施設場所
改正後電気設備技術基準159条では以下のような特殊な場合においても金属管工事による施設が可能となっております。
爆燃性粉塵がある場所 | 可燃性粉塵がある場所 | 可燃性ガス又は引火性物質がある場所 | 危険物を製造しまたは貯蓄する場所 |
---|---|---|---|
可能 | 可能 | 可能 | 可能 |
木造住宅であっても金属部分に絶縁が施してあれば施設可能となっており、金属管工事があらゆる場所で施設可能となっていることがわかります。
金属管工事の使用方法
金属管工事の注意点と、D種接地工事
金属管工事は交流回路で金属管に電線を引き入れる場合においては、電磁的平衡を保つために一回路の電線のすべてを同一の管の中に収める必要があります。電磁的平衡を保てない場合、磁力線の変化によって渦電流が流れ、金属管が過熱されたり、うなりを生じてしまうことがあります。
単相2線式の場合、必ず2本を同一の管の中に、三相3線式の場合においては必ず3本を一緒に同一の管の中に収める必要があります。ただし、使用電圧が300V以下の場合において、原則D種接地工事を施す必要があるのです。しかし、このD種接地工事を省略できる場合があります。それは以下のような場合です。
- 乾燥した場所で菅の長さが4m以下の場合
- 対地電圧(電線と接地点または接地側電線との間の電圧)が150V以下で、管の長さが8m以下のものを、乾燥した場所または人がふれる恐れがないように施設した場合
これらの場合において使用電圧300V以下の場合の金属管工事であってもD種接地工事を省略することがあります。
露出配管、隠ぺい配管、占積率
金属管工事においてどのくらいの太さの菅を選定するかというのは重要なことです。金属管を選定する際には引き換えが容易にできるようになっている必要があります。先ほど一回路の電線のすべてを同一の管の中に収めないといけないと述べましたが、実際太さがことなる場合があります。異なる太さの電線を同一の管の中に収める場合、絶縁被覆を含む電線の総和が管の内断面積に占める割合(=占積率)が32%以下となるようにする必要があります。
断面積S[mm²]の金属管にS₁、S₂、・・・Snの断面積の電線を収める場合の占積率の計算は以下のようになります。このような計算で占積率を求め32%以下であれば同一の管の中に収める電線の本数に応じて収めることができます。
金属管工事の種類
金属管工事には露出(展開)配管と隠ぺい配管の2種類があります。それぞれは先ほどの金属工事の施設場所でしめしたような場所で、場所に応じた方法が行われます。
露出配管
展開した場所(駅のホーム等)で用いられます。天井など造影剤に合わせて施工する場合は、タイル壁などにハンマードリルで穴をあけ、ホールインアンカー等を使って支持固定をします。屋側配管において管内の雨水の侵入を防ぐと同時に電線被覆の損傷を防止するために水平配管の管端にはエントランスキャップ等を取付てさび、腐食を防ぐためのペンキなどを塗ります。
点検できる隠ぺい場所
メタルラス、ワイヤラスなどの金属でできている造営材に配管する場合においては、漏電防止のために、管と金属製のものとは電気的に完全に絶縁することが望ましいです。また、腐食などを防ぐためにペンキを塗ります。
点検できない隠ぺい場所
間仕切り壁に埋め込む場合、金属管肉厚1㎜以上のものを支持点間距離2m以内の間隔となるようバインド線などで固定します。ただ、二重天井内には各種の設備用配管が収められており、法規上の離隔距離と、施工上の支障が生じないようにしないといけません。
まとめ
以上、電気工事の施工方法の一種である金属管工事について、その概要や施設場所、方法などについてを紹介してきました。金属管工事の特徴はなんといっても適用可能な場所が広いということです。金属管工事は複数の異なる太さの電線を収めます。その際に占積率を考慮しないと、電磁的平衡が乱れ、火災などの事故が発生してしまうおそれがあります。はん用性が高い工事だからこそ気をつけないといけません。